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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第21章 "術"

『ピピ…ピピ…』
障子の側の床から、鳥の鳴き声が聞こえる。
「繋ぎか??」
瑠衣が障子を少し開けると、鳥は待ってましたと言わんばかりに瑠衣の肩の上に止まった。
「・・・・・・・・」
暫く肩の上に止まっていた鳥は、役目を終えたとばかりに部屋の中を一飛びして霧散していく…
(今夜決行か…
繋だけ寄越した所を見ると、当代様と一族でやるつもりか…
まぁ‥お手並み拝見といきますか…)
二つ目の黒い術石…
それが壊れれば、次々と他の場所が判明する筈…
点は線になりつつある。
「もう少しだな…」
瑠衣は一言零して、また筆を進め出した・・・
書類整理も終わり、土方への提出分と、先程分けた符を一緒に持ち土方の部屋に向かう。
(・・・まだ寝てる・・・訳は無いよな‥?)
土方ならば有り得ない話では無い、溜め息一つ付きながら廊下を歩く。
「おや?
橘君、土方君の部屋かい??」
何時の間にか、後ろには山南が微笑んで佇んでいる。
「はい、山南さんもですか?」
「えぇ、少々用がありまして‥ 」
「ならば自分は出直しますよ?」
「いえいえ、大した用では無いので、ご一緒してくれませんか?」
「山南さんが宜しいのであれば、ご一緒します」
山南は瑠衣の先を歩き出す……
何となく不思議に思いながらも、瑠衣は山南の後を追う。
(…山南さん…
もしかして、誰か来るのを待っていた??)
何となくだが、そんな気がしてならない…
土方と山南の確執は、もう少し後の話の筈だ…
いや…
既に火種はあるのかも知れない。
分かっていても手は出せない…結構もどかしいものだ。
漠然とそんな事を考えている内に、土方の部屋の前に来てしまう。
「土方君良いかい?」
「んぁ、山南さんかい?
あぁ良いぜ」
山南は障子を開け中に入って行く‥瑠衣も仕方が無く後に続く事に…
「副長失礼します」
中には既に起きて文机に座り、書類と格闘している土方の姿がある。
「橘も一緒か、珍しい組み合わせだな??」
「あぁ、橘君とは途中で会ったのですよ、行き先が同じなので一緒に来たのです」
「はい」
土方は持っていた筆を置き、此方に向き直る…
流石の土方も、山南相手に仕事しながらという訳にもいかないのだろう。

