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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第21章 "術"

「で、用件は?」
山南は此方からどうぞと、目で合図している…
瑠衣は仕方無く、自分の方の用件から切り出す事にした。
「自分は今日の書類作成の上がりと、朝の約束の物を持参しました」
土方の前に書類と十枚の符を置く。
「書類って‥
また総司の奴逃げやがったのか!?」
「一応交代制でやってますが‥」
半分自分が脅してだが………
「はぁ…
余り甘やかすな橘‥
それと、これが例の符というやつか??」
土方は符を一枚手に取り、読めない不思議な文字をしきりに眺めている。
「‥日本の昔の文字と、清国の昔使っていた文字の組み合わせですね…」
横目で見ていた山南がさり気なく言う。
「はい、山南さんの仰る通りです…
陰陽道は昔の清国の陰陽‥
つまり太極の流れを組んでいますから…」
「陰陽?太極?」
理解出来ないと土方は恒例のように、頭をポリポリ掻いて此方を見ているが…
「太極・陰陽自体は、昔の日本の頃から使われています…
つまり、この世は光と影から出来ているという教えから来ているんです…
それを術や真言、呪いとかを使う方達を、道士と呼びます
それと日本の古い卑弥呼でしたっけ…
その流れを汲む、一種の神掛かり的な術や真言を合わせた物が、陰陽道の始まりだと聞いています…」
小難しく長い説明なのに、土方も山南も瑠衣の話を聞き入っている。
(かなりの学がありますね、それに武もある、橘君は一体何者でしょうか?)
「橘君は詳しいですねー
私でも、其処まで詳細には知りませんでした」
山南が関心した様に自分を見ている‥いや探っているのか??
「…山南さんも、あの文字がお分かりになるなんて流石ですよ」
「いえいえ私は古い漢詩が好きなだけですから」
古い漢詩といっても、普通読めない者の方が多い筈、それをあっさり見破るとは…
瑠衣の山南に対する価値観が少し変わる。
(流石学者肌の山南敬介という所か…
相当な学を持っている…
これは、迂闊な事は話せないな)
瑠衣と山南の静かな攻防を余所に、土方は符をヒラヒラさせ瑠衣に聞いて来る。
「橘、この符を一枚づつ持たせれば良いのか?」
「あ…
はい、しかし持ち回りというのは少々…
符は紙が切れたり、文字が薄くなったりしたら、効力が無くなりますから…」

