この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
木之花ノ夜想曲~夢語り~
第21章 "術"

「今日は何事も無いと良いんですが…」
「そうですね、今日の巡察の目的は、符の効力の方に有りますからね」
「沖田先生、間違っても不逞浪士を全力で追いかけないで下さいよ・・・」
「分かってますよぉ」
さもさもと頬を膨らませて総司は瑠衣を見る。
「そんな顔に騙されません」
瑠衣は総司の不満を見事に無視する事に…
「ちぇっ…」
瑠衣に見透かされた事に気づき、少々不機嫌な総司…
そんな痴話喧嘩から今日も巡察が始まる。
(これで良いのか一番隊・・・・・)
街中に入り決まりの順路を歩く…
いつぞや土方が言っていた通り、隊服では無く普通の羽織・袴だ、やはり一番隊が始めに犠牲になった・・・
日も傾き、静寂な夜の静けさがやって来る…
多分賑わっているのは、島原と祇園くらいだろう‥
不思議と島原・祇園は"鬼"の被害が少ない。
それに合わせて、巡察順路から外されている事が多い…
不逞浪士が居た所で、あの中では見付けるのすら難しい、それも理由の一つでは有るが‥
総司と瑠衣は鏡を見ながら歩く、勿論周辺の観察も忘れない。
「沖田先生、このまま順路を進むと"鬼"と出くわす場所が有りますね」
「そうですね、このまま試しに進んで行きましょう、もし駄目でも私達が倒せば済む事ですし」
その言葉に少々ムッとする瑠衣、符自体は完璧である、問題点はどの程度で"鬼"が避けるかの方なのだが、総司はそれに気付いていない。
「…倒せば…ね…」
思った事が、ついつい言葉に出てしまった。
「あれ?
何か違いました??」
「いーえ、何も違いは有りません」
「な…
何か‥橘さん怒っていませんか・・・・・」
流石にひしひしと瑠衣の怒りを感じる…
何か変な事を言っただろうか?
総司は本気で考える。
「別に何も怒ってはいませんよ沖田先生」
"沖田先生"とあらかさまに付ける時程、怒っている証拠だと思う・・・
(私‥何を怒らせました??)
考えても、中々答えが出ない‥と言うか分からない??
「兎に角、先を急ぎますよ沖田先生」
「あ‥
はいはいっ‥」
"鬼"に向かいドンドン進んで行く一番隊、瑠衣は総司の方に振り向く事もせず、ずっと鏡を見詰めている。
(黒の術石の事もある、憂いはさっさと片付けた方が良い)
・

