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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第21章 "術"

注意深く鏡を見詰める…
現代で言えば、後100mはあるかという所で"鬼"は自分達とは逆方向に動き出した。
「当たりですね、この距離ならば安全圏です」
総司も鏡を見ながら"鬼"が去って行くのを確認している。
「そうですね、大体一番良い距離感ですね」
「えぇ、近く無く、遠く無く程良い感じです」
総司と瑠衣は符の手応えに納得する、これなら他の隊に回しても十分効果を発揮する筈。
「さて私達は予定の順路を歩き戻りますか」
「そうですね、副長に報告もある事ですし、早く終わらせましょう」
符の効果は大成功…
こうして一番隊の巡察は、何事も無く屯所に戻る事になる。
土方への報告も終わり、瑠衣は着替えもせずに夜の縁側で、一人空を見上げていた。
空にはまだ七本の線が残っている、八陣結界が君臨して続けている。
今夜、当代様達がその内の一カ所を破壊する予定に、瑠衣は居ても経っても居られず、つい縁側に座り時を待っている…
(相変わらず忌々しい…)
この結界がある限り、自分は"時渡り"が出来ない…
一度現代に戻り確認したい事もある、それに力の問題も残っている…
(…まだか?)
もう深夜というにはかなり遅い時間、一体当代様達はどうしているのか??
期待と不安が頭を過ぎる。
(まぁ‥
当代様達に限って失敗は無いな‥)
そうは理解はしてても、つい空を見上げてしまう。
「はぁ―――」
吐く息が白い…
幾ら冬の始めだからと言っても、深夜のこの時間では気温がグッと下がる。
瑠衣にとっては、寒さは大した問題では無いが・・・
どの位こうして縁側に座っていたか………
『パ―――――――――ン!!』
突如、何かが壊れる音というか波動が来た。
(やったか…)
空を見上げると、囲っている線が六本に減っている…
自分が破壊した隣だ。
(二つ目、後で正確な場所を聞かなくては…
早くこの忌々しい術が消えて無くなれば良い)
瑠衣はもう一度空を見上げると、一度目を瞑り自室へと戻って行った・・・・・

