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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第22章 "罠"


「どしたの??」

相変わらず、ふわりと浮きながら姿を現した華因…
これに関しては、もう何も言う気力すら無い・・・・


「ん‥その……
女子の着物一式借りたいんだが…」

「へー
上手くやってるんだ…」

ただ羽織っているだけの着流しから見える総司との情事の痕を見て、ついついニコリと笑ってしまう。


「なっ………!?
兎に角、普通の街娘に見える着物だぞっ!!」

何処を見てるのか分かってしまい、照れ隠しについ声が大きくなってしまうのは仕方が無いと思う
華因には、総司の事は極力隠していた‥まぁ薄々気付いていたとは思うが……


「はいはーい
着物ねぇーちょっと待っててねぇーー」

少し考えたようだが、機嫌良さそうに宙をふわりと一回転して、華因は転移して消えた・・・


(…何か不安だ………)


他に頼む相手が居る訳も無く、泣く泣く華因を呼んだが、やっぱり頼む相手を間違ったかと本気で思い始めた時、華因がまた戻って来た。



「これでどうかしら?」

手に持つのは、薄紅色を基調に、下の方には青い花びらが散りばめられている着物、それと華因の手の中には紅入れがある。


「・・・・・
うん、結構気に入った」

素直に綺麗な着物だと思う…

「そぉー!
ぁたしの見立ても悪く無いでしょう…
そうねぇ‥髪は普段の長さで一括りに結ったらどうかしら、髪紐は綺麗だし」

「そうする…」

着物一式と紅入れを華因から受け取とると、何故か華因はさっと姿を消してしまう・・・・・



薄紅色の着物と薄紫色の帯、花びらに合わせた青い帯紐…
別に着付けが分からない訳けでは無いが、瑠衣は少々躊躇ってしまう……


(総司になんて言われるかな?)


思い切って着流しを脱ぎ、女物の着物に袖を通す……

一通り着付け終わり、部屋の隅にある鏡台の鏡の蓋を開け、自分の姿を見てみた。


「・・・・・・あっ髪!!」

本来の腰より長い髪に戻し、総司とお揃い髪紐で緩く一括りに結う。

多分何処から見ても女の姿だ・・・


「私…だよね?」

別に姿替えを変えた訳では無いし、まぁ髪は変えたけど…
それでも、鏡に映っている自分の姿が俄かに信じられない。


最後に畳の上に置いていた紅入れを開き、そっと唇に引いて見た…

限りなく薄く引いた紅は、瑠衣の細く目鼻立ちが通った綺麗な顔を、余計に引き立てる。
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