この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
木之花ノ夜想曲~夢語り~
第22章 "罠"
京の街中を歩く、美男・美女の二人組・・・
男は、髪を横に束ねて一つに結い、紺一色の着流し姿‥
女は、薄紅色の着物に長い髪を背中辺りで一つに結い、彼方此方見て回っている・・・
何の事はない、要するに総司と瑠衣の二人組である。
本来、この時代では男女が手を繋ぐなど、はしたないとはばかれるのに、往来が激しいからと総司は構わず瑠衣と手を繋ぎ、瑠衣も気付かない振りをして、彼方此方見回し総司を振り回して歩く…
だが、どちらも楽しそうに、笑顔で京の街中を歩き回っている・・・
そんな中、此から島原に繰り出そうとしていた原田・永倉・藤堂は楽しそうに歩く総司を目撃する事になる…
勿論、女が瑠衣だとは気付いてはいないが……
「新ぱっつあん…
あれ…総司じゃ無い??」
藤堂が少し低い背をいっぱいに伸ばして、小間物屋を覗いている総司を発見した。
「どれ………
本当に総司だな、それも女連れ!?」
「本当だ、総司が女連れて歩いてやがる…
それも相当な美女だぜあれは」
永倉も原田も藤堂も、総司が女連れで歩いているのに驚き暫し固まってしまう、まさか総司が女連れ‥有り得ない光景を目にしている、そんな感じ…
一方、総司達は楽しそうに、笑顔で街中を歩いている。
「左之、平助追うか…」
永倉がニヤリと笑い、原田と藤堂を焚き付ける…
「「勿論!!!」」
三人は島原に行くのも忘れ、野次馬の如く総司達の後を追う事にした・・・
「偶にはこういうのも楽しいですねぇー」
一方、此方は女子姿の瑠衣にご機嫌の総司である。
「クスッ…
そうですね、私も楽しいです、普段見れない物も見れますし…」
仲良く手を繋ぎ、往来をかき分けながらも、何処か楽しそうに歩く二人…
「けど、本当に簪要らなかったのですか?」
先程の小間物屋で、瑠衣が一本の簪をしきりに気にしているのに気付き、買ってあげようとしたが、瑠衣に止められてしまった…
「貰っても‥
使い道が有りませんから…」
それは‥総司に買って貰ったら凄く嬉しいが、多分女子の姿をするのはこれっきりだと思い、総司の申し出を断ったのだ。
「持っているだけでも良かったのですよ?」
もう何度も、瑠衣は頑なに首を横に振っている…
「私は今のままで十分ですからね‥総司」
「そうですか……」
ちょっと残念だと思う…