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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第22章 "罠"


京の街中を歩く、美男・美女の二人組・・・

男は、髪を横に束ねて一つに結い、紺一色の着流し姿‥

女は、薄紅色の着物に長い髪を背中辺りで一つに結い、彼方此方見て回っている・・・

何の事はない、要するに総司と瑠衣の二人組である。


本来、この時代では男女が手を繋ぐなど、はしたないとはばかれるのに、往来が激しいからと総司は構わず瑠衣と手を繋ぎ、瑠衣も気付かない振りをして、彼方此方見回し総司を振り回して歩く…
だが、どちらも楽しそうに、笑顔で京の街中を歩き回っている・・・





そんな中、此から島原に繰り出そうとしていた原田・永倉・藤堂は楽しそうに歩く総司を目撃する事になる…
勿論、女が瑠衣だとは気付いてはいないが……


「新ぱっつあん…
あれ…総司じゃ無い??」

藤堂が少し低い背をいっぱいに伸ばして、小間物屋を覗いている総司を発見した。

「どれ………
本当に総司だな、それも女連れ!?」

「本当だ、総司が女連れて歩いてやがる…
それも相当な美女だぜあれは」

永倉も原田も藤堂も、総司が女連れで歩いているのに驚き暫し固まってしまう、まさか総司が女連れ‥有り得ない光景を目にしている、そんな感じ…

一方、総司達は楽しそうに、笑顔で街中を歩いている。

「左之、平助追うか…」

永倉がニヤリと笑い、原田と藤堂を焚き付ける…


 「「勿論!!!」」


三人は島原に行くのも忘れ、野次馬の如く総司達の後を追う事にした・・・




「偶にはこういうのも楽しいですねぇー」

一方、此方は女子姿の瑠衣にご機嫌の総司である。

「クスッ…
そうですね、私も楽しいです、普段見れない物も見れますし…」

仲良く手を繋ぎ、往来をかき分けながらも、何処か楽しそうに歩く二人…

「けど、本当に簪要らなかったのですか?」

先程の小間物屋で、瑠衣が一本の簪をしきりに気にしているのに気付き、買ってあげようとしたが、瑠衣に止められてしまった…


「貰っても‥
使い道が有りませんから…」

それは‥総司に買って貰ったら凄く嬉しいが、多分女子の姿をするのはこれっきりだと思い、総司の申し出を断ったのだ。


「持っているだけでも良かったのですよ?」

もう何度も、瑠衣は頑なに首を横に振っている…

「私は今のままで十分ですからね‥総司」

「そうですか……」

ちょっと残念だと思う…
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