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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第22章 "罠"
「「・・・・・・・」」
注意深く気配を伺っている二人……
暫く待ち、原田達の気配がかなり遠くなって、やっと安堵の溜め息を漏らした。
「総司、今の内に戻りませんか?」
「…そうですね」
短い会話の後、様子を見ながら路地を歩き進め、先程の茶屋まで戻って来た。
「はぁ…
左之しつこいですっ!!」
部屋に入った後の瑠衣の第一声がこれである・・・
総司も布団の上に座り頬をポリポリ掻いている、言いたい事が分かるだけに、如何ともし難い…
「左之は何に対してもああですからねぇ-
あれはもう性分でしょう」
瑠衣も総司の隣に座り溜め息一つ吐く……
「性分ですか…
確かに………」
女に対しても、お酒に対しても、仕事に対しても、左之はかなりしつこい、おおざっぱな所もあるが、見た目以上の粘りとしつこさがある。
「それが左之の良い所でもありますから」
ニコリと瑠衣に笑顔を向ける‥この笑顔には勝てそうになさそうだ。
「・・・
総司がそう言うのであれば…」
総司と原田の付き合いは長い…
試衛館時代からの仲間であり友人である、その総司がそう言うのであれば、瑠衣に反論の余地は無い。
と‥瑠衣はふと前々から思っていた事を思い出した!!
「試衛館と言えば……」
「どうしました??」
「総司、私に剣術教えて下さい!!」
「はいっ!?」
剣の腕は瑠衣の方が遥かに上である、では何故??
「あ…
言い方がちょっと違いますね、天然理心流を教えて下さいという意味なんですが…」
現代にも流派は残っているが、全てが残っている訳ではない…
天然理心流は、一応近藤の代で一度途絶えている……
現代に残るのは、後年永倉が、近藤の縁者に自分が覚えていた理心流を伝授したもので、本家近藤や総司のような完全な物では無いのである。
日頃の総司の剣筋を見て、ある程度は分かるが全てじゃ無い、だから此処に居る間に全てを覚えたい、そんな思いに駆られた・・・
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