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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第23章 "師"
「はぁ-っ…
お前ぇら‥真面目にやる気があるのかよっ!!
将軍上洛も近いんだ、憂いはさっさと絶った方が良いに越した事はねぇんだよ!!」
土方が頭をポリポリと掻く…
相変わらずの困った時の癖だ…
「そう言われましても、痕跡すら残っていませんので…」
斉藤も微妙に困り顔をしている…
現場に行きました、が、武器と人らしき消し炭しか残っていなければ、誰でもそうなるだろう。
「大体、火を使って人しか燃えていない、普通ならば近くに飛び火してもおかしくない路地裏だった筈、ならば同じ忍と言う可能性はありませんか?」
土方と並び、程良く頭の切れる永倉が可能性を提示する。
「あぁ、俺もその線を考えている、奴は倒幕佐幕どちらも狙っていた可能性があるからな」
その言葉に幹部全員が納得したように頷く…
「忍の事は忍にしか分からなねぇ、監察方の仕事に成るだろう…
兎に角、将軍上洛に向けて倒幕側の動きが活発化する可能性が高い、巡察を怠るなよ」
「「「「「はい」」」」」
こうして確たる結果が出ずに、ただ長いだけの幹部会議は終了した・・・
それぞれ持ち場に戻る幹部達、総司と瑠衣も今日は昼巡察なので、着替えの為に自室へと戻っている。
「はぁ-
あまり生きた心地しませんねぇ…」
背中合わせで、巡察の為に忙しく着替える総司と瑠衣…
「知っていても話せない事もあります」
まさか月詠が下手人です‥なんて間違っても言える訳が無い…
結局の所、本当にあの男の身元は分からず仕舞い、相変わらず手掛かり無しである。
「まぁ-
そうですね、今回は仕方がありません」
着替え終わり刀を手に此方を向く総司…
「多分…
言っても信じて貰えませんよあれは・・・」
瑠衣も刀を手に持ち総司を見る…
「…ですよねぇ-・・・」
あの光景を一体誰が信じると言うのか??
月詠が瑠衣並みに強く、あの男を瞬殺にしたなんて、どう考えても思い当たらないだろう‥
見ていた自分だとて、思いっ切り疑問に思っているのだから。
「話は此処までにして、時間が無いんです、行きますよ沖田先生」
「分かってますよ橘さん」
この話は此処で切り、仕事の時の呼び名で気を引き締めながら、二人は平隊士達が待つ屯所前の正門へと向かった・・・