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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第23章 "師"
「ふぅ…
此処までにしましょうか?」
「はい」
それと共に総司は木刀を下ろす…
瑠衣はまだ木刀を振って、何かを考えいるらしい。
「どうしました??」
「いえ…」
振っていた木刀を止め、瑠衣は総司を見る。
「出来れば…
総司の師である近藤さんの太刀筋を見たいなって…」
「私では役不足ですかぁ?」
「違いますよ、人が変われば、どう技を出すのかなって思ったまでです」
「あぁ、なる程」
総司と近藤では技の組み立て方や行動が違う…
一度やれば徹底的に、逸れが瑠衣らしいと言えばらしい。
「師走ですし、局長暇無いですよね…」
「そうですねぇ-」
最近の近藤は屯所に居ない事が多い、会議だの付き合いだの外交面での仕事の為、此は仕方が無い。
更に屯所に居ても、土方並に書類整理に没頭している事が多い、局長と言うのはかなり多忙である。
「一応聞いて見ますか…?」
頬をポリポリ掻き、どうしましょうな顔をして瑠衣を見る。
「出来れば・・・・・」
瑠衣もどことなく複雑な顔をしている。
「では、後で聞いてみますね」
「えぇ、お願いします」
此処は素直に総司に従う事にした。
「さて、そろそろ戻りませんと、朝餉で平隊士達が広間に集まる時間ですね」
総司は木刀を背に担ぎ、空き地を歩き始める…
「そうですね、総司、今日も有難う御座いました」
そう言って総司の後を追い始めた……
「ひと月経たずに覚えて仕舞うのですから、私の楽しみ無くなりそうですよ…」
自分の稽古の相手を出来るのは、そうそう居る訳ではない…
それに、教え下手な自分から、ひと月足らずで完全に覚えて仕舞うとは…
総司はただ感心するばかりだ。
「楽しみ…ですか?」
普段稽古には全く出てはいない、それに道場で総司の相手となると、稽古では無く止め役になってしまう………
だから空き地を選んで、冷静に稽古させようなどと、考えてしまったのだが…
「楽しみですよ、瑠衣くらい強くないと、後が大変ですからねぇ--」
「自分は当て馬ですか……」
「ですから、何処でそんな言葉を覚えて来るのですか??」
瑠衣から出る下世話な言葉に、些か呆れるしか無い・・・・・
「これだけは秘密です」
ニッコリ笑って総司の答えをかわす、これだけは本当に教える気は無い。