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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第24章 "山"
「今回の将軍様上洛に当たる警護の話、実質警備に付くのは隊長格と一番隊数名ですよね?」
「あぁ…
そうなるな」
勿論、瑠衣もその中に入ってはいるのだが…
「では、自分は外して貰えませんか?」
土方は意外そうな顔をして、瑠衣の方に振り返る。
「どうしてだ?
名誉な事だろう…」
「えぇ、それは理解しています、ですがそれに伴い巡察の回数も増え、一番隊だけ空けとく訳にはいかないんではありませんか?」
「それはそうだが…」
「でしたら沖田先生を通常隊務に戻し、自分が"鬼"の方を受け持ちます」
「だがな橘…」
頭を掻きながら瑠衣を見て困っている様子…
此奴らを離すとロクな事が無い。
「前の様な下手な事はしません、それに警護が終わる間までです…
それに"剣豪沖田"を出さないと、周りに示しが付かないんでは在りませんか??」
土方にしてみれば、全くもって瑠衣の言う通りなのである…
総司の名は思いの他知れ渡っていて、会議にもそろそろ総司を出さないと都合が悪い。
「橘、お前はそれで良いのか?」
「はい、自分は元々"鬼"の為に入隊した様なもんですし‥良いんです」
土方は暫く瑠衣の目をジッと見る……
その目には迷いも躊躇いも一切無い、端っから腹を括って此処に来たのが伺える。
「はぁ…
分かった、お前の言う通りにするぞ、今日からで良いか?」
「勿論です」
「後、総司の説得もお前に任せる…
どうせ話て無いんだろ?」
総司がこの話を先に聞いていたら、黙っている筈が無い、土方は揚げ足は取ったとばかりにニヤリと笑う。
「殴り倒してでも説得しますので、ご心配無く」
当然のように、アッサリと土方に言ってのける…
初めから決めて来た事だ、今更である。
「……
お前らそれで本当に恋人同士かよ…」
「それはそれ、これはこれですから…」
最近の瑠衣は全く公私混同はしない、月詠の一件で総司を死の淵まで巻き込んだ経験が、瑠衣をそう動かしている。
「兎に角、お前の意見は了承した、裏は頼むぞ」
「心得ました」
ニッコリと笑い、瑠衣は普段と変わらない様子で土方の部屋から去る・・・
「たくっ…
とんでもない女だな…」
土方はもう一度頭を掻き、積もり積もって投げたしたい書類に向かって、嫌々ながらも続きを始めた・・・・・