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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第24章 "山"
「…
冗談です、すみません………」
やり過ぎた‥本当にすまなそうに肩を竦める。
「ほんま…
始の頃の強気な橘は何処いったんや…」
「強気ですか?
意外と今の自分の方が、本当なのかも知れませんね…」
相変わらず、山崎を見ず遠くを眺めて話す…
「どういう事や?」
「そのままの意味ですよ、総司は副長には話したと言っていましたが…
自分は此処に来るまで、余り感情って無かったんです…」
どうして今、山崎に話す気になったんだろうか…??
「感情が無い!?」
「…
言い方が悪かったですね、感情があるのを忘れてた…
そう言った方が正確ですか…」
一体、橘には何があるんだ??
驚きが隠せない、山崎はそう思って、動揺だけは必死に隠している。
「本当に忘れてたんですよ…
そういう生活だったのもあるんですけどね、感情の無い人形‥出された情報を正確に判断し、的確に指示を出す、そんな自分に何にも疑問も浮かばなかった…」
「・・・・・」
山崎は、ただ無言で瑠衣の話を聞いている、問う間も無いのだ。
「けど、新撰組に来て、みんなの個性的な感情に触れて、あぁこんな感情もあったなぁって…
それを一番教えてくれたのは、総司なんですけどね…」
「沖田はん??」
「えぇ、勿論楽しいとか、嬉しいとか基本的な感情はありましたが、曖昧な感情ってのが分からなくて…
それを根気よく教えてくれたんです」
「…そうか…
で、今はどうや?」
「今ですか?
…大分感情的になったと思いますよ…
自分でも驚くくらいに…」
多分、自分が女だと分かっている山崎だからこそ、知っていて欲しい…
そんな事を思う自分が何処かにいる。
「余計な話をしました…
さて仕事しますかぁーっ!!」
瑠衣は鏡を見"鬼"の位置を確認し全て覚える…
そして山崎に質問される前に"神足"を使い"鬼"に向かう為に、屋根の上から飛び降りた…!!
「お…
おいっ!?」
置いていかれた山崎は、瑠衣を追い掛けるのに必死だ!
自分が遅いんじゃ無い、相手が速すぎる!!
瑠衣が向かった方向を、鏡で確認しながら進むが、次々と光が消えていく…
「冗談やろ…」
四半刻も経たない内に"鬼"の反応は全て消えてしまっている。
始め‥鏡には十個以上の光があった筈…
それをこの短時間で、全て始末してしまった・・・