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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第24章 "山"
瑠衣は整理した報告書を届けに立ち上がる…
そして土方の部屋へと向かった。
「副長、橘です報告書をお持ちしました」
「入れ…」
何時も通り、障子を開けて中に入る。
「遅くなり申し訳ありません、昨日の報告書になります」
微妙な瑠衣の話し方の違いに、思わず嫌な予感がして振り向く土方。
「・・・・・・・・」
瑠衣の瞳には何も映っていない、そんな錯覚に捕らわれそうになる。
「橘、一体どうした??」
「何がでしょうか?
自分には分かりかねますが??
報告書は此方に、では隊務があるので、これで失礼致します」
淡々と話し、瑠衣は報告書を置いて部屋から出てい行ってしまう。
「・・・・・・」
まるで感情が読めなかった…
橘に何があった??
此処に来た頃の笑顔すら無い、どちらかと言えば背が凍り付く様な無感情で冷徹な瞳…
(総司と離したのが不味かったか??)
流石に土方も不安を隠しきれない、前回の高杉の一件より、何かこう‥空恐ろしいものを感じる…
何事も無ければ良いのだが・・・
瞑想したせいで感情が元に‥現代に居た頃に限りなく戻ってしまっている事に、瑠衣すらも気づいていない・・・・・
そして、そのまま"鬼"の捜索の為に夜の京の街に飛び出した・・・
鏡を使う事も無く、瑠衣は次々と"鬼"を倒していく・・・
(次は何処じゃ?)
屋根の上から"鬼"の気配を探る……
(…居た…二匹か…簡単よ…)
"神足"を使い一気に"鬼"に接近する!!
『ザシュ…シュン…』
屋根から降り際に"鬼"を二匹、簡単に斬り倒してしまう…
「手応えが無いのぅ…」
今の瑠衣は、考え方が朱雀に戻ってしまっている…
瞑想…
それは、現代で自分を抑えるのに使っていたもの…
此処で瞑想すれば、心が神である朱雀へと戻ってしまう。
当たり前の事だったので、瑠衣はその事に全く気付いてはいない・・・
「次だな…」
今は半分瑠衣の感情、半分朱雀の感情という、危うい均衡を保っている。
広範囲に気配を読み、次の"鬼"を探す……
「居た…」
一瞬で屋根の上に上がり、次に向けて走り出した…
既にもう二十匹以上の"鬼"を退治している。
しかし今の瑠衣は、止まる事を知らない・・・