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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第24章 "山"


(総司の匂いがする…)


昼過ぎ、寝心地の良さにぼんやりと目を覚ます…


(あぁ…
今朝総司の布団に入って寝たんだった…)


温もりこそ無いが、総司の匂いが微かに残っている…


(やっぱり気持ち良い…)


此処数日のお詫びと、自分が何となくそうしたかったので、つい総司の布団に潜り込んでしまった。


名残惜しいが、布団から出て身支度を整え始める。


(昨日総司が助けてくれなかったら、一体どうなっていたのか…)


朱雀としての意識…

それは普通の人間が考えるものとは全く別なもの…

自然と調和し、歴史を監視し正す…
そこに人間的感情は殆ど存在しない……

神の意識は自然と同じ、ただ肉体があるだけ多少人間に近いが、その思考に人の部分は存在しない。

普通は神の意識を抑えつつ、尚かつ朱雀という神をやる…
でなければ、肉体と人間としての意識の均衡が取れないからである。


(ギリギリでも、橘瑠衣としての意識を保ってたのが奇跡だな…)


無意識に瑠衣として行動していた自分…

多分、歴史の歪み"鬼"の存在と結界陣があったから、保っていられたんだろう。


「しっかりしないと…」

総司を離したのは自分、なのにその自分が総司に助けられるとは…

だけど気が楽になったのも事実、久しぶりに総司の愚痴を聞いて総司と…………


「………
さ…さて今日も頑張るか!!」

昨日の総司との出来事が、少しだけ頭を過ぎる・・・


「・・・・・」

…余計な考えを振り切って、一日の行動を始める瑠衣だった・・・・・








夜ー


瑠衣は何時も通りに、屋根の上に登り、手に持った鏡を見ている…


「今日もそこそこだね…」

鏡には数件の光の反応がある、師走に入ってからずっとこの調子だ。


「まぁ…
お詫びに頑張らないと…」

腰を上げ、"鬼"の光を目指して、今日も屋根の上をひた走る・・・





一通りの光の反応を回り"鬼"を始末をし、お気に入りの物見櫓の天辺でまた街を見下ろしている…


と…其処に、人の気配が一つ……


「…あれ??」

物見櫓から見える少し先に、一人の男が歩いているのだが…


「副長!?」

感じる気配から土方だと分かり、瑠衣はすぐさま櫓を飛び降りた。
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