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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第24章 "山"
トンッと屋根に飛び降り、そのまま屋根伝いに土方を追う・・・
土方は近道をする気なのか、またもや路地裏を歩いているし…
「副長!!」
瑠衣は漸く追い付き、屋根の上から土方に声を掛けた…
「!?!?」
まさか屋根の上から、人が出て来て声を掛けるとは思わず、思わずと言うか、反射的に腰の刀に手をやり屋根の上を見る土方‥だったが…
「…橘!?」
瑠衣は気にせず、音も無く地面に着地した。
「副長、自分殺す気ですか?」
土方はまだ刀に手を掛けたまま、茫然と此方を見てる…
そして、ハッとしたのか、慌てて掛けた手を下げた。
「お前、屋根の上から出て来る事はねぇだろうが…」
眉間にシワを寄せて此方を睨み返して来る。
「追うんなら、屋根伝いが一番ですので…ぁはは…」
睨みを苦笑いで切り抜けようとする・・・
「?????」
(此処数日の無表情が戻ってやがる??)
今の瑠衣は普段通りの感じだ、あの数日間の冷たい雰囲気は全く無い。
「どうしました副長?」
「いや…
なんでもねぇ…」
元に戻ったなら、それで良し…か…
土方はそう思う。
「所で、どちらにいらっしゃったんですか?」
土方から遊女の匂いはしないのだから、島原辺りでは無い筈…
「あぁ、今日は総司の代わりに藩邸で会議だった」
実の所、総司を敢えて屯所に残し、帰って来た橘と二人に非番を出して、何処かに放り込むつもりだったのだが……
その為に、山崎と色々画策していたのだが、こう普通に戻っているのならば、必要は無いだろう。
「なる程」
「偶には俺が出ないと不味いだろ」
「まぁ…
そうですね」
此処で立ち話もしょうがないので、土方に付いて路地裏を歩き始める…。
「ところで副長、何時もこんな路地裏ばかり歩くんですか?」
「あ??
地図さえ覚えれば割と近道だしな、それに良く地図とは違う時があるから、修正するのにちょうど良い」
「はぁ…
そうですか……」
しかし、新撰組副長が深夜の路地裏ってのは……
「お前ぇだって、前にそれで助かってるだろ?」
これ見よがしに土方はニヤリと笑う。
「確かに…
そうですが…」
高杉の時も路地裏だった、普段から路地裏歩きをしてる??
もう、呆れ半分で言葉が無い……
『パキーン!!』
…その時、土方が何かに触れた!!