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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第24章 "山"
「全く‥鬱憤晴らしの良い運動になったぜ…」
文句を言いながらも息一つ乱してはいない、流石は土方である。
「自分は毎日ですけど………」
『パキン‥パキン‥パキン‥パキン‥パキン‥パキン‥パキン‥パキン‥』
「何っ!?」
黒の術石が連続で割れた音、瑠衣は嫌な予感がする。
「副長不味いですよっ…」
「なんだと!!」
割れた結界の中から、また"鬼"が現れた、それも人の姿をした上級が十匹……
「「冗談(だろ)」」
流石の瑠衣でも顔色が青ざめる…
一匹でも手ごわいのに、一気に十匹……
幾ら何でも不味過ぎる。
今、自分が所持しているのは符が三組、石が一組…
とてもじゃ無いが、無駄な行為になりそうだ。
力を使うにしても土方が居る、それに先程から人間の気配が一つ…
多分"目"だろう、ならば迂闊な事は出来ない。
十匹の上級の"鬼"達は、互いを牽制している、瑠璃が言っていた教示が高い…
これは案外当たっているみたいだ、だが自分達をみすみす逃がす気は無いだろう。
瑠衣と土方は"鬼"と一定距離を取ってるが、向こうがその気になれば無意味な事。
「本当に…
とんでもない大当たりですね…」
「…生きて帰れる気がしねぇ・・・」
「えぇ…
自分もです……」
最低でも土方だけは逃がさないといけない、どうしたものかと悩む瑠衣だったが…
其処に……!
"フワッ…"
急に気配が一つ、瑠衣と土方の前に現れた!!
「と…
朱雀様!!」
二人の前に現れたのは、予想外の人物‥当代様である!!
「幾ら我でも、上級が此処まで揃えば感づくだろうて…
橘‥"鬼"は一度我が縛する、その間に我は"目"を殺る…
縛はそないに持たぬぞ…
それと…」
当代様は、土方に向かって術石を一つ投げた…
「!?」
土方の回りには赤い結界が作られる、そこに当代様は腰に着けていた飾りを、土方に向かって放り投げる…
土方の方は、なんとかだが飾りを上手く受け取った。
「土方よ、その結界線から外に出れば命の保証は出来ぬぞ…」
土方は、あまりの事態に、ただ茫然と頷く…
いくら感が良い土方だとて、未だ状況が理解出来てはいないらしい・・・
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