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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第25章 "帝"
瑠衣のその言葉に、井上が目を丸くする。
「橘ちゃんの意思なんかい?」
「えぇ…」
井上は優しく‥だけど少し悲しめに目を細めた。
「ならば、わしらは何も言えんわい」
「・・・・・・・」
それっきり井上も島田も黙り込んでしまう…
暫しの沈黙…
しかし、それを破ったのは他ならぬ瑠衣だった。
「源さん、お茶ご馳走様でした、自分部屋に戻りますね」
色々思いはあるけれど‥ただニコリと笑い立ち上がる。
「うんうん、何時でもおいで」
「はい…」
瑠衣は草履を履き炊事場を出る…
偶には中通路を通らず、外を回って部屋に戻ろうと思う。
(本当に静かだ…)
主要幹部に精鋭の平隊士が出ている為、残り組は屯所警備の為、待機状態になっている。
だから今日は道場からも声が聞こえない。
何時もの活気とはかけ離れた屯所内…
気紛れに雪を被った屯所内を見回しながら瑠衣は幹部棟への道を歩く。
"チュンチュン"
「…?
繋ぎ??」
何故こんな時に??
瑠衣の肩に、当代様からの繋ぎの型代の鳥が止まった…
当代様は今日、将軍上洛に合わせて御所の筈で、自分に構っている暇は無い筈だが?
「・・・・・はぁー!?」
型代の伝言内容に、思わず場所も考えず間抜けな声を出してしまう…
(な…
なんで待ち合わせ!?
しかも用件の方の伝言が無いし………)
こんな忙しい日に待ち合わせとは、当代様は一体何を考えているのやら…
兎に角、指定された場所に行くには、此から屯所を出ても時間がギリギリ……
瑠衣は大急ぎで部屋に戻って着替え、待ち合わせの場所に全力で走った・・・・・
「はぁーー
やっぱり暇ですねぇー」
総司は欠伸をかみ殺し、所定の場所にボーッと立っている。
「仕方がないだろ、逆に何かあったら大変だ…」
そういう土方すらも暇を隠せないで居る。
そう、此方は警護組……
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