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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第25章 "帝"


「そろそろ真面目に行くぞ」

瑠衣も外を眺める、御所の正門までもう僅かだ…

「…
かしこましました主上」

優雅に一礼し、微笑しながら当代様を眺める。


「言い忘れていたが、時間が無かったせいで、そなたにも公卿共と幕臣共の席に付き合って貰う」

「…
承知致しました…」


輿が止まる…

焔が輿を開き、当代様は優雅に外に出る、そして無表情に此方に手を差し伸べている。

瑠衣はその手を取り、居並ぶ一族が礼の姿勢を取る中、輿から外に出た…
軽く微笑し当代様を見つめ、その手を離し軽く一礼する。


その時、少し遠くから視線と見知った気配を感じた!!


(…総司……)


振り向く事は出来ない、今の自分は一族のフリをしているのだから…

瑠衣と当代様と焔は、そのまま何事も無いように、御所内へと入った・・・・・




御所内を優雅に歩く朱雀様(当代様)達一行、昔の栄華は何処へやら…
それでも、体裁を保って居られたのは徳川のお陰か…

それとも……

宮中女官の一人が一行の前に現れ、一行を奥の一室に通す。


「暫しお待ちくだしゃりまし、只今滞り無くお支度をしております故…」

宮中言葉でそう言い残し、女官は部屋を後にした。




「焔、御簾を開けよ」

焔が外を遮っている御簾を開ける…
冬の御所の中庭がまた美しい。


「我はこの景色が好きでの…
外宮とは趣が違う所がまた良い」

少し眩しそうに目を細め庭を眺める朱雀様は、日の光に反射している様で、独特の雰囲気を醸し出している。


「そうで御座いますね…
外宮の庭園は清の手法が多御座います、この様な古の式たりにそった庭も、また趣があり宜しいかと…」

型通りの言葉を返す瑠衣、今日一日この調子で演じなければならない。


「平安の世の御所はもっと美しいものだった、今とは比べ物にならない程にの…」

"時渡り"は出来ずとも"時見"は出来る、それに朱雀様は平安の世をご存知の筈。


「そうで御座いますね主上…」

瑠衣も複雑そうに庭を眺める。

自分も知っている…
平安の世の御所がどれ程美しかったか……


朱雀様と瑠衣は向かい合わせに座り、焔は邪魔にならないよう部屋の隅に座って、ただ外の景色を眺めていた・・・
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