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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第25章 "帝"


「瑠衣、もう良かろうて……」

危険を察知したのか、朱雀様が瑠衣を止めた。


「はい、出過ぎた真似して申し訳ありません主上…」

その言葉と共に瑠衣は沈黙する…

その後も腹の探り合いは続き、終わったのは夕刻近くになった・・・





夕方過ぎ、漸く控えの間に戻って来た朱雀様と瑠衣…


「ふっ…
よくやりおるわ、我も少々肝を冷やしたぞ…」

焔が用意したお茶を、優雅な手つきで啜る…

「申し訳ありません、しかし主上、何処からその様な下世話な言葉を覚えて来るのですか?」

「下世話とな…
ふふ……
人生長いと色々覚えるものじゃて…」

八百年……

公式な事の裏で一体何をやってきたのだか…

まぁ、自分も他人の事は言えないが・・・・・



「左様ですか…」

瑠衣もお茶に手を出す。

正門が慌ただしい、多分将軍と大名共が御所を起つ騒ぎだろう…

公卿共も全てが御所内に残る訳でも無い、多分此からがお互いの勝負所…
個々で裏取引でもするのだろうと思う。


自分には関係の無い話だが………


「例の話は夜になる」

「承知致しました」

という事は、暫くこの部屋で待機という事になる。


(今日は帰れそうに無い…)


ちらっと総司の顔が浮かぶ、先程の気配からして、かなり動揺してたのは知っていた。


(帰ったら何て説明しよう…)


つい其方に気を取られてしまう…

最近、考え方の中核に総司が居る、総司ならどうするか…
自分が知っている歴史と共に、最良の策を考えてしまっている。


(寂しいのはやはり私の方…)


一人に馴れていた自分に、手を差し伸べてくれた…
一緒に居ると言ってくれた……
だから今、一人がとても寂しく感じる。


夕暮れに染まる庭を見ながら、瑠衣は一人静かに瞳を閉じた…・・・・・
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