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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第25章 "帝"


だから幾ら探しても、宋 永輪という人物は出て来ない…

事実や資料が無ければ歴史にも残らない、深く"時見"をしない限り、自分が知らないのも通り…

という事か………


「御上、その社の場所は?」

朱雀様は御上に社の場所を聞く…
社は御所内の端々に八つ、その内の二つが破壊された社だ。


「夜分すまなかったの…
我は社を見に行く、瑠衣付いて参れ」

「かしこまりました…」

瑠衣はもう一度御上に一礼をし、御上の私室を後にした・・・





御所内の通路を歩く朱雀様と瑠衣…


「主上…
宋永輪という名に、心当たりは御座いますか?」

朱雀様の後ろを歩く瑠衣が、小さく声を掛ける。

「…
名は知らぬが、確かに数年前まで若い陰陽師が居たのう…
別の役に付いたと思うておった」

後ろ姿で表情は分からないが、その声は思案げだ……


「宋…
一族でしょうか‥それとも……
しかし‥何故安倍家は、其処まで能力のある者に、安倍の名を与え無かったのでしょう?」

この時代でも近親婚は罪、ならば安倍の一族の女性と宋永輪を婚姻させ、血を濃くする方法もあった筈…

十五くらいなら、この時代なら普通に婚姻してもおかしく無い歳…
なのに何故そうしなかった??


「…
逆に能力が高過ぎるのも嫌煙されるもの、それはそなたが一番良く理解しているものと思うが…?」

「…それは……」

朱雀である自分を見る人間の感情…
憧れもあるが、大概は恐れ、畏怖、恐怖…
そんな感情が渦巻いている。

強過ぎる力は、力の持たない者には憎しみの感情を持たせる…
宋永輪も、そうだったのかも知れない。




通路を抜けて、庭に出て社のある場所に辿り着く…
この社は破壊されていない物の様だ。


朱雀様も瑠衣も社を良く調べる……


「かなりの封印が成されているな…」

社の周りに八陣結界、その中に五陣、三陣と結界が幾重にも配置してある。

更に三陣の中に、何かを守るように防護結界、それに万が一破られた時を考えてか、攻撃用の人形代まで置いてある。

一つでも破られれば、全て発動する仕組み…
此処まで厳重に守る物、だとしたら……


「外法の封印……」

「恐らくな…」

社の中心には黒い塊が見える、多分それが外法の書の一つ…
書物の形では無く、記憶の玉なのかも知れない…
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