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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第25章 "帝"


幹部棟の廊下が異常に長く感じる……


(次は…総司…)


此方は土方の様にはいかない…

土方に話したのは全て本当の話、ただ…
その後を話さなかっただけ……

総司相手にそうはいかない、まだ本当の事を言うか、誤魔化すか迷いに迷っている。


自室に戻りたく無くて、廊下をノロノロと歩く…

幾ら遅く歩いたって、何時かは着いて仕舞うのは勿論分かっている、ただ少しでも気持ちの整理をしたいだけ。

部屋からは総司の気配がする‥瑠衣は意を決して自室に入った・・・




「只今戻りました」

一応、何事も無かった様に部屋に入ったが……


「あ…
お帰りなさい」

部屋の中で、ご機嫌に団子を食べていた総司に、思わず目を疑ってしまう。


「・・・
夕餉前に団子…
ですか…………」

余りにもの予想外の展開に、肩の力が抜けてしまう…
この大らかさが、総司の特権なのだが……


「そう言えば瑠衣、昨日は綺麗でしたねぇー」

目を輝かして此方を見ている‥団子を持ちながらだが…


「は…
はい!?」

「ほら昨日の、朱雀様と一緒に居たでしょう」

「あーえー
はぃ………」

何となく話を核心部分に持っていかれるような‥誘導尋問にあってる様な‥
余り良い予感はしない………


「どうして一緒に居たのですか??」

笑顔で瑠衣に質問して来る総司、やっぱりと諦め半分の瑠衣‥此処は誤魔化すのを止めて正直に話そうと思う。


「はぁー
先程副長にも話ましたが、朱雀様の強制連行ですよ…
とりあえずお飾りでの条件付きで、付き合う羽目に成ったんです」

腹を括って火鉢の前に座り、暖を取る。


「それで?
もしかして一緒に出たのですか??」

「…はい一応……
正門前で見た通り、見た目を変えて、一応肩書きを付けて、御所内大広間の公武顔合わせには朱雀様の控えとして居ました」

「では、帝や将軍様にも?」

「はい、御上と家茂公、それに公家、幕臣の重要な方は殆どいらっしゃいましたね、自分は見ていただけですが」

「では内容も??」

「内容に意味はありませんよ、総司の藩邸の会議と変わりありません、狸と狐の睨み合いで終わり、中身なんかありません」

「へー
意外と上も下も変わらないのですねぇ」

「前にもそう言いましたが?」

総司は呑気に火鉢で団子を焼いている。
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