この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
木之花ノ夜想曲~夢語り~
第26章 "考"

「上手くやっているな…」
高杉は躊躇いも無く、吉田の隠れ家の一室に入って来た。
「あぁ‥壬生浪の目をかい潜ってやっているよ」
吉田は軽く酒を煽りながら言う、そして高杉にお猪口を差し出す。
「彼奴らもしつこいからな…
まっ、用心に越した事は無い」
吉田からお猪口を受け取り酒を注ぐ、が‥呑まずにお猪口の酒を眺めている。
「用心か……
部下の一人や二人捕まろうがどうでも良い、目的さえ果たせればな」
吉田はまた一気に酒を煽る。
「目的…か……」
「あぁ…
先生の敵‥幕府など無くなれば良い!!」
「そうだな…
今の時代の流れに幕府は必要ない‥邪魔なだけだ…」
高杉は持っていた酒を、漸く煽る。
(幕府か…)
お猪口と徳利を持ち、何時もの窓に座り外を見る高杉・・・
(あの男はどちらなんだろうな…)
お猪口の酒を少し呑み、何も無い一面真っ白の雪の外を眺めて考える。
(あの女を手に入れる為に、彼奴の話に乗ってみるか?)
自分に対しても、あの男は危険だと判断出来る、だが‥あの女、橘瑠衣を手に入れようとすれば、男の力が絶対に必要だ。
「俺が女一人の為になぁ……」
「何か言ったか晋作?」
吉田が不思議に思い声を掛けるが……
「いや……
なんでも無い、ただの一人言さ」
「…そうか……」
吉田はまた勢い良く酒を煽った。
そんな吉田の姿を見ながら、高杉は吉田のように、真っ直ぐに突っ走りたい気分になる。
(あの女の事も、多分これで最後になるだろうさ…)
何時までも京には居られない、奇兵隊の事もある、女一人に構っていれる時間はそう多くは無い。
(最後の賭くらいしても罰は当たらんだろ…)
高杉はお猪口に入っている残りの酒を、決意の元、一気に煽った・・・
・

