この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
木之花ノ夜想曲~夢語り~
第26章 "考"

一方、新撰組は今日も夜の巡察、毎日順路を替えながら、二隊が京の街を回る。
今日の巡察組は一番隊と三番隊、瑠衣にとっては久々の巡察になる。
「何か久しぶりですねぇ、橘さんと巡察するのも…」
「そうですね、自分も沖田先生も、ひと月以上別行動でしたので」
「そうですよねぇ」
沖田先生・橘さん…
この呼び方も久しぶりのような気がする。
平隊士八人を連れ、順調に夜の街中を歩く一番隊、三番隊は反対方向担当になる。
「今日も風が強いですね、それに雪も…」
「京の寒さは独特ですよねぇー」
一月の寒い風と雪が、まるで一番隊を拒んでいるようにも見える。
顔に当たる雪に目を細めながら、周りの気配を探っていく総司と瑠衣と一番隊の面々。
大通りを吹き抜ける風は強い、それに今日は月が雲に隠れて視界が悪い、提灯二つではなんともし難い状態。
目が駄目なら気配……
という事になってしまう。
「何にもありませんね」
「そうですね、先生そんなに簡単に見付かる訳無いじゃありませんか?」
「それはそうですが…」
実際、放火の前に見つかった試しはない。
「…沖田先生…あれっ!!」
少し先に、微かだが炎が見える!
「急ぎますよっ!」
走り出す一番隊達、見通しが良かったら、もっと早く見つけられたものを…!!
現場に到着すると、一軒の空き家が燃えている。
「仕方が無いです、家ごと壊しましょう」
平隊士達は、まだ燃えていない柱に縄を巻き、一斉に引っ張る!
「…せいのっ!!」
勿論、総司も瑠衣も引っ張っている、こういう時は、隊長も平隊士も関係ない。
『ドサ――――ン!!』
家が崩れた所に、ドンドンと水を掛けていく…
一時程して、ようやく火は収まり、平隊士達は種火が残っていないか確認して歩いている。
皆すすだらけで真っ黒になりながら、必死に消化活動にいそしんでいる、これも組の仕事の内の一つ……
「・・・・・???」
瑠衣は気配を一つ見付け首を傾げた。
「どうしました橘さん?」
総司も瑠衣の行動に気付いたよう…
「気配が一つ…
どうしますか沖田先生?」
「・・・
追ってみましょう」
後を平隊士に頼み、瑠衣と総司は気配を追うのに走り出した。

