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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第27章 "辱"
夕方、一本の刀を大事そうに抱え、総司が屯所に帰って来た。
「瑠衣居ますか?」
火鉢の前に座っている(寒さ対策が火鉢しか無いんですよ…)瑠衣を見付け、総司はにこやか笑顔で部屋に入って来た。
「お帰りなさい総司、その刀ですか??」
「えぇ、見ますか?」
総司は瑠衣に今持って来たばかりの刀を手渡して、ニコニコしている。
「…拝見します」
刀を横持ちし、サラリと鞘から引き抜く。
時代は其処まで古くは無いが、打ちといい波紋といい、かなり良い逸品である。
「…良いですね……」
「やはりそう思いますか!」
ニコニコと瑠衣を見て嬉しそうな総司、やはり瑠衣に良いと言われると、殊更嬉しいものがある。
「名は?」
「加州清光と言います」
(…やはり……)
現物は勿論見た事は無かったが、噂通りの逸品…後々最後まで使用する総司の愛刀だ。
「良い名ですね、菊一文字にも勝るとも劣らない…
長さも総司が使うのに丁度良い所ですし、目を付けていただけありますね」
ゆっくりと加州清光を鞘に収めた。
「でしょー
京に来た頃に、偶々見掛けて‥もう一目惚れですよぉー!
まさか、こんなに早く手に入るとは思いませんでした、瑠衣のお陰ですね」
瑠衣が返した刀を大切そうに眺めている。
(…一目惚れですか……)
此だけの逸品、気持ちは分からなくも無い…
自分も多少は武器が好きで、密かに集めてたりする勿論現代での話だが……
「いえ、其れだけの価値はあると思いますよ」
「でしょでしょー!!」
(本当に剣術馬鹿なんだから)
笑顔で刀を抜き眺めている総司を、嬉しさ半分、呆れ半分で見つめている。
「ねぇ瑠衣、夜暇でしょう、空き地で刀同士で稽古しませんか?」
「…はい、良いですよ付き合います」
早く使いたくて堪らない、そんな雰囲気が総司から出ている…
使ってこそ刀‥総司達には刀は決して美術品では無く実用品だ。
「絶対ですよぉー!」
「分かってますよ」
ニコリと微笑み返して、瑠衣は夜に備える事にした。
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