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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第27章 "辱"
「やはり良い感じですよ」
「そのように見えますね、まるで初めてでは無いようです」
「えぇ、私もそう感じます、始めからあったような…」
不思議と刀は持ち主を選ぶという、銘刀なら銘刀程その傾向は高い…
多分この刀も総司を持ち主に選んだ‥でなければとっくの昔に売れていただろう。
「総司、兎に角バレると不味いので、今日は此処までにしませんか??」
「そうですね、戻りますか」
「はい」
屯所に入るまで、刀の話に夢中になりながら歩く…
実はどちらも剣術馬鹿な二人なのである・・・
「うーん…
やはり此方にします」
「あ、決まりましたか?」
総司は新しい加洲清光の方を手に取り腰に差す。
夜巡察に行くのに、どちらの刀にしようか迷っていたのである。
「瑠衣と立ち会いして、彼処まで動けるならば問題ないと思いますので」
「まぁそうですね、自分もそう思いますよ」
「では行きましょうか、皆さん待ってますでしょうから」
「それは総司が選ぶのに時間を掛け過ぎたせいでしょうに…
兎に角行きますよ"沖田先生"」
瑠衣はワザと沖田先生と強調して部屋を出て行く。
「ぶー
瑠衣の意地悪…」
そう言いながら、瑠衣の後に続き部屋を出て門へと向かう総司だった。
少し出遅れで出発した一番隊、組み合わせの三番隊は既に街中に入っている筈。
「橘さん、少し急ぎませんといけませんかね?」
「…順路が別ですから、特に問題無いと思いますが、多少は合わせた方が良いかも知れません」
余り離れると、合図の呼び子(笛)が聞こえない恐れがあるし、両隊を行き来している監察方にも迷惑が掛かる。
「そうですね、少し歩みを早めましょう」
足を早め一番隊は街中に入って行く・・・
相変わらず夜の京の街は人気が無い、元々昔の迷信などが根強く残っていて、夜に出歩く京の人は少ない。
街を歩くのは島原や祇園帰りの男達や、地方から来た迷信を知らない商人や出稼ぎ労働者、それに‥良からぬ事を企む不逞浪士くらいのもので、堂々と街中を歩くのは新撰組しか居ない。
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