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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第7章 "刀"
「んー良いのではないですか?
主人もこう言って下さってますし、貰っちゃいましょう」
「ありがとう御座います、沖田先生、ご主人」
店主の言葉に少々嬉しくなって脇差しを腰に納める。
「その代わり、甘味は橘さんの奢りでね」
こそっと耳打ちする総司…
笑い出したいのを抑え…
「分かりました」
と一言…
「では主人、ありがとう御座いました」
「はい、沖田はんまた寄っておくれやす…」
そう言い二人は刀屋から出た。
「さぁー
次は甘味処ですよぉー橘さん」
刀屋のほど近くに総司行き着けの甘味処はあった。
「いらっしゃーい」
十五~六才位の可愛らしい女性が顔を出す。
「お志乃ちゃん、また来ちゃいましたぁー」
総司はニコニコとその子と会話する。
「沖田はん、毎度おおきに‥
今日は何にするんどすか?」
総司を見て顔を赤くしながら、お志乃は注文を取ろうとする。
「橘さん、何が良いですか?」
橘さんと言われ、お志乃は向かいに居る瑠衣の方へ顔を向けた。
「た…橘はん言うんどすか…
うち、この店のお志乃言います、どうぞご贔屓に…」
瑠衣を見て、更に顔を赤くするお志乃…
端から見れば、かなりの美男二人組である、お志乃が真っ赤になるのも無理はない。
ただし、どちらも自覚は無いが……
「お志乃ちゃん、私は団子十皿にぜんざい五杯、後羊羹三皿で‥」
「・・・・・・・・・」
(食べ過ぎだろうっ!!)
注文を聞いただけで胸焼けして来る、普通の女子でも此処までは食べないと思う‥多分…
「自分は団子一皿とお抹茶で…」
「橘さん、それだけですかぁー??」
「自分これで十分です‥」
「えー!!
私今日は控え目に注文してるのですよ?」
(これで‥控え目…)
どんだけ甘味が好きなんだか、目の前の総司が甘味で出来ている錯覚に捕らわれる。
(考えたら、余計に胸焼けして来た……)
考えるのはよそう‥そう切実に思えて来る。
「お待ちどうさんどす」
お志乃は次々と注文の品を卓の上置いて行く…
総司の目は、目の前の甘味でキラキラと子供のように輝き放って今にも飛び付きそう。
「じゃあいただきます」
総司は団子二本を両手に持ち、パクパクとさも美味しそうに口の中に放り込んでいる。
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