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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第7章 "刀"


「・・・・・・・・」

開いた口が塞がらないとは、こういう事を言うのだろうかと真剣に思う…
とてもじゃ無いが、朱雀として生活していたら絶対見れない光景だ。




夕方屯所に戻り、総司は事も無げに夕餉を食べている。


(どんな胃袋してんだよ‥)


隣で胸焼けに襲われている瑠衣(?)、とてもじゃ無いが箸が進まない。

「どうしたんですか橘さん?」

食べないのが不思議だと言うように聞いてくるが…


(あんたのせいだよ!!)


とは言えない‥

「すみません、お腹がいっぱいなもので…」

「そうなんですかぁ、朝はもっと食べていましたよね?」

良く見てる、そう瑠衣は思う
一見何も考えて無さそうだが、かなり目端が利く人物だ。

「とにかく、もう食べれません」

「じゃぁ仕方がないですよね、おかず貰っちゃいます」


(・・・もう好きにして下さい・・・)


完全に今の自分は根負け状態である。

瑠衣の分のおかずもたいあげた総司は満足そうにお茶を啜ってる。


「御馳走様でした
沖田先生、自分は先に部屋に戻っていますね」

そう言い残し瑠衣は大広間を出た‥


(たった一日で、随分人間くさくなった気がする…)


こんなに感情に振り回されたのは初めての経験…
新撰組の人間性もあるが、原因は総司であろう。


(あんなに感情を表に出す人間なんか居なかったから‥)


自室に戻る途中で縁側に座り、ぼーっと考える


(別の意味で、変に深入りしたのかも‥
自分がこんなに感情豊かとは思わなかった)


今まで無意識に抑えつけてた分、出てしまった感情は大きい。


(参ったなぁ
現代に戻ったら、元の無表情に戻れるかな??)


切れる朱雀様なんて、もってのほかである。


(早く契約を果たして戻らないと…どんどん自分の感情が制御出来なくなりそうで怖い)


そんな時…


   『ドクン』


外から‥いや体の内側から力が流れ込んでくる。


(華因、上手く島原に入り込んだみたいだね)


ふと前を見ると桜の木…


(此処は瑠璃と最初に出会った場所か…)


どうやら幹部棟の一角だったらしい、あの時桜の木の方から幹部棟を見ていたから気づかなかった。

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