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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第27章 "辱"
まだ冬の寒さが残る中、道場は男達の熱気と掛け声が響き渡る。
そんな中に平然と座っている瑠衣、斎藤はそんな瑠衣の姿を見て先日の廃寺の一件を思い出してしまう…
男達に囲まれても平然と芝居し、物怖じなど何も無い…
あの時自分が狼狽えていたならば、間違い無く浪士共と斬り合いになっていただろう。
その度胸、そして剣の腕、どれ一つ取っても自分は適わない…
これで女子だと言って誰が信じる??
だが‥触れた体の感触、その唇・舌…
全てが女子のそれである。
自分を諌めた唇や舌の感触が、今でもはっきり思い出せる。
だが、此処に座っている橘にそんな感じは全く無い、精々少し小柄な優男‥そんな雰囲気を醸し出しいるのみ・・・
「どうかしましたか斎藤さん?」
ただ瑠衣の隣に立ち尽くす斎藤を不振に思い、瑠衣は斎藤に声を掛けた。
「…いや…
何も無いが……」
「???
そうですか…
では自分これで稽古を終わりにしますので」
「…あぁ……」
斎藤の考えをよそに、瑠衣は立ち上がり隊士達に稽古終了の合図を出す。
(全く情けないな俺は…)
そんな瑠衣の後ろ姿を見ながら、己の弱さを実感する斎藤だった・・・
井戸で汗を流し、胴着を着替えようと自室に向かう、道場の熱気と男共の汗の臭いが胴着に染み付いているようだ。
今日の書類当番は総司で、多分‥まだやっている筈である。
「…総司」
障子を開け中に入ると…
其処には、予想通り書類と格闘する総司の姿があった。
「あー
稽古の方が先に終わりましたか…」
「其方はまだまだですね」
クスクス笑いながら着替えを始める。
「書類整理は苦手なんですよぉー」
総司は筆を回してふてくされ気味。
「分かってますよ、一番隊隊長様が書類整理が、苦手だからと逃げようなんて考え‥有りませんよね?」
さり気なく‥いや、思いっ切り総司に釘を刺す。
「ふぅ…
それを言いますか…」
「はい、隊長を見張るのも副隊長の勤めですからね」
「…最近の瑠衣‥なんか意地悪です…」
今度こそ頬を膨らまして拗ねる総司…
「隊務は隊務、私情は私情ですよ」
着替え終わり、総司が座る文机の隣に座った。
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