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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第27章 "辱"
「…行くか……」
小さく一言洩らし、大木から飛び降り、屋敷の正面に向かう。
無駄に忍び込んでも仕方が無い、呼び出したのならば正面から堂々と入ってやる・・・
門を抜け、正面入り口から中に入って行く…
気配はあるが誰も出ては来ない。
薄暗い廊下に、まるで誘うように転々と灯りが灯されている、慎重に灯りの通りに歩く…
今のところ大きな罠は無い、だがところどころに、方陣の黒幕の目とおぼしき符が貼り付けてある…
此方の動向を見る為‥いや、高杉達の動向をも見る為に、見えない位置に配置してある、誰も信用出来ない‥疑心暗鬼の男のようだ。
素知らぬ顔で通り過ぎた後に、符は力で燃やしてしまった。
(さて‥何が出るか…
あの男の事、そう簡単に帰れはしまい……
しかし法陣の奴と手を組むとは、落ちたな…)
慎重に歩みを進めながらも、今の状況を考える…
高杉に取っても方陣の黒幕は危険な存在な筈、それを敢えて手を組むとは…
一体何を考えている??
一番最後の灯りの先に扉が見える、瑠衣は覚悟を決め扉を開けた・・・
『ガタッ…』
総司の耳にも外から扉の開く音がする、其処には何の感情も無いような、冷たい瞳をした瑠衣が立っていた。
「ふっ…
やっと来たか‥待ってたぜぇ……」
部屋の一番後方で、総司の首に刀を付けた高杉が立っている、来るのは始めから予想済みだ。
「言った筈…
次に会う時が貴様の最後だと……」
「そんな事言えるのか?
お前が言う事を聞かないと、沖田の命は無いぜ副隊長さん??」
「・・・・・・・・・・」
どちらも引く事無く、お互い膠着状態が続く…
痺れを切らしたのか、高杉が刀を持つ手に力を入れた。
"ツ―――――ッ"
総司の首から鮮血が一筋流れる…
それを見て、瑠衣は高杉を更に強く睨み付けた。
「くく…
先ずは刀を捨てて貰おうか…」
高杉が瑠衣に命令する…
「・・・
ちっ………」
瑠衣は仕方無く、腰から大刀と脇差しを引き抜き床に放り投げた……
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