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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第27章 "辱"


「クスッ…
兎も角、瑠衣歩けますか?
何時までも此処に居る訳にはいかないでしょう」

「そうですね…
ゆっくりとならば何とか歩けると思います‥多分…」

脱がされた着流しをきっちり着直し、試しに朱桜刀に向かって歩いて、刀を引き抜き、放り出している鞘と脇差しを手に取ってみた。


「大丈夫…のようです」

少々辛いが歩けない事は無さそうだ…
刀を鞘に収め、脇差しと一緒に腰に差す。


「では行きますか」

「はい」

血の海を迂回し、部屋を出て屋敷を抜ける総司と瑠衣…
瑠衣の歩みに合わせ、ゆっくりと屯所への帰路の道を歩く事にした・・・








一方、法陣で屋敷から外に転移した高杉、どうやら屋敷の裏手に出たようだ。


「・・・ふんっ強制的か…
だが、あのままでは此方も危なかったがな」

あれ以上沖田と対峙していれば、確信に此方が殺られただろう…
それだけ沖田の剣に迷いも手加減も一切無かった。


「…あれが鬼の剣……」

高杉は屋敷を離れながら、容赦なく手下を斬り殺す沖田の姿を思い出す。


「全く本当に鬼の申し子だなあれは…」

敵に回すと一番厄介な性格…
その気になれば敵と判断したら、女子供でも簡単にその手に掛けるだろう事くらいは想像が付く。


「全く‥壬生浪は厄介揃いだな…」

結局、自分はあの女にかなりの打撃を与えたとは思うが、手に入れる事も多分壊す事も出来なかっただろう。

それに…


「何故沖田の縄が解けた?
何故遠くにあった筈の女の刀を沖田が持っていた??」

謎は深まるばかりであるが、自分にはこれ以上関わる事は出来ないのだ…

国元から帰参の打診が何度も来ている、そろそろ無視する事は出来ない状況に追い込まれていて、近い内に帰参せざる負えない。


「ちっ……
最後の賭も失敗か…
俺らしくも無い」

そう零しながら、高杉は夜の闇に紛れ消えて行った・・・


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