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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第27章 "辱"
「大丈夫ですか?」
屯所への帰り道、瑠衣の歩く早さがあらか様に遅くなっていく事に気付いた。
「かなり辛いですね…
まぁ‥朝までに着けば問題は無いと思いますが…」
実のところ体中が悲鳴を上げている…
勿論、高杉のあの無理な行為が原因だ。
暫く考えて総司は立ち止まり、ひょいと瑠衣を横抱きに持ち上げた。
「何故朝まで大丈夫なのです?」
持ち上げられて思わず総司の首に手を回す瑠衣、もう習慣と化してるような…
「居ないのを見付かると不味いので、形代を二体自室の布団に寝かせて来ました、普通に見て私達が寝てるように見えます」
「なる程…
相変わらず瑠衣の術は色々便利ですね」
「便利ですか??」
総司に掴まりながら、瑠衣は不思議そうに首を傾げている。
「えぇ…
"鬼"の動きを止めたり、稽古の相手を作ったり、今こうして身代わりを作ったり……
一体何処まで出来るのでしょうねぇ」
「はぁ…
時と場合よります…
その時に一番良い方法を取ってるだけです」
「それでも、私達普通の人には出来ない事ですよ」
「……
一応‥此でも朱雀様ですから…」
「クスッ、そうでした」
総司にべったり張り付いて少々むくれる瑠衣、これはこれで良いのだが…
「総司、誉めるか貶すかどちらかにして下さい」
そんな拗ねる瑠衣もまた可愛くて、総司の心を温めてくれる。
結局、瑠衣は歩けなくて、総司に横抱きに抱えられて屯所まで帰る事になってしまった・・・
正面門から入るのは流石に不味いので、瑠衣は総司に何時も繋ぎの時に使っている、裏手の蔵の方から壁を越える場所を教える。
総司はその言葉に従い、裏手から屯所の中に入り、そして細心の注意を払い、漸く自室まで戻って来た。
其処には、総司と瑠衣に見える二つの形代が、布団の中でぐっすりと寝ているように見える。
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