この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
木之花ノ夜想曲~夢語り~
第28章 "謎"
(山内ねぇ……)
廊下を歩きながら、乱闘事件の時の山内の態度を思い出す。
(確かに、良い気分はしませんでしたが…)
近藤までもを見下し、不遜な態度を取り、大した詮議も無く終わらせたという経緯がある。
一方、力士達とは和解し、逆に壬生寺で新撰組の名の元、相撲興行を行っていて、今の関係は良好だ。
(山崎さんの結果待ちですか…)
総司はふと庭の桜の木に目を移す、蕾が付き、もうすぐ春がやって来る…
(…瑠衣は良くこの桜の木を見ていますよね……)
暇な時、瑠衣が縁側に座り、この桜の木を眺めてるのを良く目にする。
(桜が咲いたら、瑠衣と夜桜見物なんて行きたいですねぇ…)
瑠衣が何時まで此処に居るかは分からない…
だが、それを承知で自分は瑠衣を愛した。
何時か必ず別れの時がやって来るのは理解している。
果たして自分は、それを受け入れる事が出来るのだろうか??
瑠衣と自分の時間が、決して相容れない事は理解しているつもりだ。
…朱雀様で八百年…
瑠衣には後どれだけの長い時間があるのか、其処までは自分も分からない。
それに、あの空の結界が無くなれば、瑠衣は瑠衣の居場所に帰ってしまうだろう。
元々、不可抗力で此方に来たと言っていた。
ならば全てが片付いたら帰るのが筋である。
…当たり前の事だ……
(頭では分かっているのですけどねぇ)
頭と心は別で、自分は瑠衣を離したく無い‥その思いが心を占める。
自分が唯一心から愛した女性、後にも先にも瑠衣以外の女は考えられない。
「はぁ…」
この問題に解決の糸口は有るのか…
溜め息混じりに桜の木を見詰めている…
(私はどうしたら良いのでしょうかね…)
総司と瑠衣、同じ思いを胸に悩みは尽きない・・・・・
(…あれ??)
総司が自室に戻って来ると、瑠衣が畳の上で気持ちよさそうに眠っている。
(クスッ、風邪‥引いちゃいますよ)
自分が着ている羽織りを脱ぎ、そっと瑠衣に掛けてやる。
それでも瑠衣は起きない……
(初めの頃は部屋に入る前に目を覚ましたものでしたのにねぇ)
瑠衣の横に座り、久々にゆっくりと瑠衣の顔を見る。
(相変わらず綺麗ですねぇ…
何時の間にか安心して眠るようになりましたし…)