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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第7章 "刀"


「人を切る"覚悟"

"鬼"を切る"覚悟"

自分が鬼と呼ばれる"覚悟"

切った人の人生を背負う"覚悟"

その全ての"覚悟"が橘さん、あなたにありますか?」

総司の目は真剣である。

最もな話だ、その"覚悟"がなければ足手まといなのだから…


「此処に来た時点で鬼になる"覚悟"は出来ています、人でも"鬼"でも切ってみせましょう」

「そうですか、それを聞いて安心しました」

総司は表情を和らげる、そして箪笥の中から、羽織りを一枚取り出した。


「夕方、土方さんから預かりました橘さんの隊服です」

浅葱のダンダラ、新撰組の象徴とも言える隊服…
多分、自分に"覚悟"が無かったら渡さないつもりだったのではないか、瑠衣は自分が試されたと分かる。


「…確かに受けとりました」

瑠衣は隊服を掴み大事そうに抱えた。


「明日の夜から隊務になります、夜の巡察は"鬼"が目的ですが、不逞浪士が出る可能性も高いので"覚悟"して下さいね」

「分かりました
所で沖田先生、脇差しをお持ちですよね?」

「はい、勿論です
それが何か??」

瑠衣は昼間刀屋から頂いた脇差しを総司の前に置いた。

「今は何も聞かず先生の脇差しと交換して頂けませんか…」

「何も聞かず…ですか?」

「はい、何も聞かず…
ですが決して先生のご迷惑になる事ではありません」

総司はしばし考える…
真っ直ぐに居住まいを正し瑠衣の目は真剣そのものだ。


「分かりました
しかし私の脇差しは普通の物より長いし重いですよ?」

総司は部屋の隅に置いてある自分の脇差しを取りに行く。

「構いません、それを承知でお願いしています」

総司は自分の脇差しを瑠衣の前に置き、座り直した。


「これもあなた"覚悟"の内ですか?」

「その通りです」

瑠衣は決して総司から目を反らさない…
見つめ合っていた目を反らした、いや正確には目を瞑ったのは総司の方だ。


「本当に不思議な人ですね、交換しましょう」

総司は瑠衣の脇差しを持ち上げる、そして静かに鞘から抜いた。

「今まであれだけ抜けなかったのに、今は簡単に抜けるのですね」

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