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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第28章 "謎"
「ただの侍ではないじゃろ…
普通とは思えない気を持っておる…」
「…普通‥ですか??」
「どちらかと言えば神の一族の気に近いのぅ…」
呑気そうに見せ掛けてはいるが、流石にこちらを見破っている…
「はぁー・・・・」
諦め半分の溜め息…
こうなれば隠すのは難しい。
「分かりました雷楓殿…
"時渡り"と言ったらお分かりになりますか?」
もういい加減にしてくれと、両手を上げて諦めの姿を取る。
「ほう…
名まで知ってたのか…
"時渡り"成る程な………」
雷楓…
今で言う中国産まれで、荒修行にて武術を習得、その技量は朱雀に匹敵する…
修行の末に仙人に昇仙、其処までは良かったのだが、生来の放浪癖と遊び好きは仙人になっても治らず、現在に至る‥と言った所か………
「で、この場に何用だった?」
「本当に通りすがりです…」
「・・・
嘘は言っていないな…」
「だから本当にたまたまです!!
雷楓殿の邪魔をしに来る程、自分は暇では無いので、あしからず!!」
瑠衣はそう叫んで、振り返る事も無く本殿を出た。
(一番関わりたく無いのに・・・)
雷楓がどれだけ面倒か、自分が身を持って体験している…
今思えば、酒に強いのも口が悪いのも、全て雷楓が原因…
本当に破天荒仙人だ。
瑠衣は境内を散策している総司と合流すると……
「総司っ!!
帰りますよっ!!!!!」
「なっ!
どうしたのですか…!?」
怒り心頭の瑠衣に、どうしたら良いのか分からない、此処まで瑠衣が怒るのも珍しい。
瑠衣は総司の腕を引き、サッサと神社を後にした・・・
(全く…
収穫もあったが、余計な収穫まで・・・・・)
六方星…
陰陽道の基本中の基本だ、どうして頭から抜けていたのか…
いや、普段自分が使わないから忘れていたのが本当のところ。
自分が使う術式は炎に属するものが数多い、炎を軸にし術を形成する。
別に炎で無くても良いのだが、その場合他の自然の力を借りる事になってしまう。
そうすると、他の四神様に自分が居るのが知られてしまうので"時渡り"としては、それも少々……
だから殆ど使う事は無く‥それに六方星は純粋に力を使う術だから、敢えて避けていたのも多分にある。