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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第29章 "策"



『キンッ!!』


予想外の反撃に持っていた苦無で弾くが、自分の苦無も反動を受けて落ちてしまった。

もう一本懐から苦無を取り出し構える。


(おぃおぃ…
その辺の忍顔負けやで……)


素早さは相手が上、ならば接近戦しか無い…
山崎は間合いを詰め、瑠衣に苦無を振り下ろす。


『ガキッ…』


事も無げに受け止める瑠衣、そのまま苦無で反撃の連撃を入れる。


『キン‥ガキッ‥キン‥キン‥ガキッ‥ガキッ‥』


山崎のほうは受けるか弾くかで精一杯…
反撃の隙が全く無い。


「……
そう言えば、勝たないといけないんですよね」


瑠衣は懐から手裏剣を取り出し、山崎に向かって投げる!


『ドスッ‥ドスッ‥ドスッ‥』


間一髪避ける‥が!

瞬間に瑠衣が山崎の間合いに入り、その心の蔵に苦無を付けた………


「・・・・・・・」

「一本…ですね……」

正確に心の蔵の上に苦無を突き付けられ、流石の山崎も観念するしか無い。


「……
わいの負けや…
条件全て飲むわ」

「ありがとう御座います」

瑠衣は山崎の言葉で漸く苦無を下ろした。


「橘、監察方やったほうがええんちゃうか?」

「自分、身軽なだけですよ?
本格的な忍の修行ってした事無いですし…」

「・・・
それに‥わいは負けたんか………」

「まぁ‥たまたまです」

これでも組一の忍と自負していたのに…
悔しさの前に開いた口が塞がらなく、山崎はガックリと肩を落としてしまう。


(これで一つ…
次は‥坂本竜馬!)


瑠衣は空の結界陣を見上げて、着々の己の策が進んでいるのを実感していた・・・・・







「えー!?
今回私は留守番ですかぁー!?」

総司の叫び声が屯所内に木霊する。

「五月蝿いですよ‥先生」

今の叫び声で、誰が来るか分からないので、一応呼び方を先生に戻したが……

その瑠衣といえば、何時もより少し明るめの着流しに髪を横縛りにして、髪紐も何時もの総司とお揃いとは別の普通の物に取り替えた。

要するに変装してます…状態(元々変装なのだが……)で、総司の側に立っている。


「仕方が無いです、良しも悪しも先生は有名ですからね、見付かると都合が悪いんです」

「ですけどぉー!」
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