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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第29章 "策"
まだゴネそうな総司に、瑠衣は仕方なしに総司の側で片膝を付き、耳元でこっそり話す。
「今回は我慢して下さいね総司…
でなければ私が困ってしまいます……」
「あ…その………」
耳元での話と、昼間から珍しい私発言…
こうまでされたら、完全に総司の完敗である。
「では行ってきます」
「くれぐれも危ない真似はしないで下さいね…」
総司の心配をよそに、瑠衣は意気揚々と屯所を飛び出した。
(さて…
寺田屋か近江屋か……)
どちらも坂本竜馬ゆかりの宿屋…
だが、二件にはかなりの距離がある。
(多分、今の当たりは寺田屋だと思うんだけど…)
となると伏見‥街外れまで行かなくてはならない。
刀は差してはいるが、何時もより気楽な姿で街中を歩く。
逆にその姿が、女も男も引き付ける事に瑠衣は気付いていない…
流石に二本差しの侍に、声を掛ける勇気がある者は居ないが………
暫く街中を歩くと、人集りが出来ている場所がある。
(橋の上だというのに…)
つい何時もの癖(巡察です)で人集りの中に入っていくのだが……
(やはり昼間は野次馬が多いな…
って、あれっ!!)
髪がボサボサで服がヨレヨレの浪人風の男一人と、数人の浪士が睨み合いをしている。
(………ま…間違いなく…坂本……竜馬・・・)
現代に残る写真そのままに、今目の前に居るのは確かに坂本龍馬本人。
「はぁ……」
余りにも呆気なく見付けてしまって、此処数日の疲れが一気に出るような錯覚に襲われるのは、仕方がないと言いたい。
(確か‥坂本は血を争いを嫌う…
兎に角、峰打ちで助けるか……)
刀を抜き、人混みから抜け出して横から浪士達に向かって行った。
『ドスッ‥ドスッ‥ドスッ‥』
大した手応えも無く、峰打ちで次々倒れていく浪士達、周りの野次馬も楽しそうに応援している。
『ドスッ!!』
最後の一人を気絶させた後、瑠衣は刀をしまいながら、向こう側で同じく相手を気絶させていた坂本へと向かって行く。
「大丈夫ですか?」
坂本に声を掛けた瑠衣だったが、その後の坂本のとんでもない行動に唖然とする事になる・・・