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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第29章 "策"


「いゃぁー
おまん、まっこと強いなぁー!
どや、わしと一緒に来んかのぅ」

瑠衣の腕を引き、ご満足の坂本…
そのまま引きずられるように橋を渡り、ドンドンと歩いて行く。

型破りの性格と伝わってはいたが…
そこに間違いないようで、序でに言えば人の意見も聞かない……

まぁ‥こっちも話してはいないが・・・


「す…
すみません!!
一体何処に行くんですかっ!
それと自分まだ、あなたの名も聞いてないんですよ!!」

すると突然坂本は立ち止まった。


「うわっ!!」

立ち止まられて、危うく衝突しそうになる(避けはしたが…)


「あー
自己紹介まだだったきのぉー
わしは才谷梅太郎いうんじゃが、おまんは?」

「は?
自分ですか…
橘瑠衣と言います…その…方言分かり難い…です…」

「おっ…すまんすまん…
まだ勉強中じゃき、橘と言うんだな宜しく」

そう言って坂本は一方的に瑠衣に握手をする。


「・・・・・・・」

「これはエゲレス語でシェイクハンドと言うき、まっ挨拶の習慣じゃ」

「は…はぁ…」

勿論知ってはいるが、答える訳にもいかない…
知らんふり‥これ一番……


「ところで…
才谷さん、自分を何処に連れて行くつもりですか?」

「おぉ…
そうじゃった、わしの仲間のとこじゃき心配いらん…」


(・・・それが一番心配なんだが……)


方向からして、行き先は寺田屋だろう…

非番なので外出届は出して来たが‥余りに遅いと総司が心配する。


「時に、おまん‥いや、お前も京の人間じゃ無いな??」

「えぇ、生まれは江戸です、少し前に京に来ました」

今度は引っ張らずに歩き出す坂本‥いや才谷、瑠衣も仕方がなくそれに続く……


「それで京鈍りが無いんだな…
綺麗な話し方だしなぁ」

馴れない標準語を、何とか駆使して話す才谷がまた面白い。


「はぁ‥綺麗ですか…
そういう風に言われたのは初めてですね、才谷さんの方言は何処のですか??」

「ん?
土佐じゃき…
いや、土佐鈍りなんだが…」

「土佐‥ですか…
なんだか凄い鈍りですね」

「そうじゃきよ-!
お陰で京では通じん、困って少し普通の言葉ってもん覚えたんだが、まぜこぜになってしもうたぜよ…」

確かに、正確な土佐弁と標準語が混ざった、不思議な話し方になっている。
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