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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第29章 "策"


「ぁははははは…
才谷さんは不思議ですね」

「不思議‥かのぅ…
良く言われはするが…」

ボサボサの髪を上で髷を作り、ヨレヨレの羽織り袴を着て、大刀と脇差しを差し、すり減らした下駄を履いている。


(写真のブーツとザンバラ頭はまだなんだな)


後々の写真に残る姿とは多少異なるのも、また面白い。


「不思議ですね…
普通京の人って、余り声を掛けて来ないんですが‥まぁ、例外な人も居ますけど…」

土方が外出すると、よく女が言い寄っている…
あれは例外中の例外……


「はぁ…
確かにそうかも知れんのぅ……
京の人は固い、だが一度信用を得れば結束も固い‥わしはそう思もちょる」

流石に名を残す人物だけあって、洞察力は鋭そうだ…

京の本質を見抜いていると…
そう思う、だからこそ最後まで捕まる事無く活動出来た、瑠衣は強くそう思った・・・





「何処まで行くんですか、もう京の外れですよ」

寺田屋は京の外れも外れ、大阪に向かう伏見街道沿いの宿屋…

その分諸藩の浪士や外様大名の屋敷も集まっていて、自分に取っては危険な場所、だからこそこんな変装紛いな事をしたのだが………


「そこじゃき」

才谷が指差すのは一軒の宿屋…
やはり寺田屋である。

留衣の方は渋々だが、二人は寺田屋の玄関先を潜った。


「梅さんっ!!
一体何処に行ってたんや!!」

中から大声と共に、一人の女子が現れたが、その姿はまるで鬼の形相…


「おぉ…
お龍、今帰った……
客人がおるでの、もてなし頼むきに」


(へー
この人が、お龍さんかぁ…)


少しきつめな迫力美人…

髪を綺麗に結い上げ、この時代の普通の着物に身を包み、才谷と痴話喧嘩をしてる姿は微笑ましいものがある。


「お客はんいらっしゃい、またこの馬鹿男に無理矢理連れて来られたんやろ、すんませんなぁ…」

「い‥いぇ…
お気遣い無く……」

「梅さんっ!!
あれほど言うとるやろっ!!」

「お龍!
すまんじゃきー!」


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