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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第29章 "策"
『サニエル殿、本題に入って宜しいでしょうか?』
向かい合わせで座った後、サニエルに瑠衣は詰め寄った。
『構いませんよ橘殿…
で、どの薬草をどの位欲しいのですか?』
瑠衣は先程坂本に見せた紙をサニエルに見せる。
『量は砂袋一つ分、余り多くは要りません』
『ふむ…
コレならば直ぐに用意出来ます』
『で…
いかほどで?』
『此方では普通に出回っている薬草です、量も多く無いので、二つ合わせて一両程で如何ですか??』
長い航海分だと考えれば妥当な値、瑠衣は暫く考えた後頷いた。
『えぇ、分かりました、此方も直ぐ手持ちがあります、それで成立といきましょう』
サニエルの方は水兵を呼び、瑠衣が欲している薬草を持って来るよう指示している。
『しかし橘殿、あなたならば、そのまま我が祖国に行っても何不自由無く生活出来ますよ』
『ぁはは…
生憎ですが、私はこの国が好きなんです』
『それは惜しいですね…』
サニエルと暫しの笑談の後、水兵が薬草を持って現れた。
『お確かめ下さい』
差し出された袋二つ、中を良く確認する瑠衣、薬草は質、量共に悪く無い品だ。
『確かに確認しました、ではお約束のものです』
瑠衣はテーブルに一両小判を置き、サニエルの方へ差し出す。
『…確かに……
橘殿、また何かありましたらご相談下さい
出来るだけ何でも御用意致しましょう』
『ありがとう御座います』
もう一度、サニエルと商談成立の握手を交わす。
これで目的の物は全て手に入った、後は罠に掛けるだけ…
内心は兎も角、瑠衣はサニエルと坂本に、ニッコリと微笑んで見せた。
京への帰り道…
坂本はずっと何かブツブツ言っているのだが……
「坂‥才谷さん??」
「全く大したもんだぜよ…
武もあり学もある‥此方側に欲しいくらいだぜよ……」
「それはお断りしますよ、自分のささやかな夢の為に新撰組に身を置いているんですから」
「惜しいのぉー」
「もしかしたら…
また会う事もあるかも知れませんね」
「しかし、わしは追われる立場かのぅ…」
「そういう意味では無く個人的です」
屯所と寺田屋の分かれ道に差し掛かる…
瑠衣は馬から下り、手綱を坂本に渡した。
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