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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第29章 "策"
「此処からは別ですので、今日はありがとう御座いました」
「おぉ…
また何かあったら顔出しちょくれ、大概は寺田屋に居るき」
「分かりました‥では……」
瑠衣は一礼して、振り返る事無く屯所への道を歩き始める。
「惜しいのぉー
あれだけの才があれば、必ずわしの目指す日本の助けになるんがの…
血の道を行くがか……」
坂本も瑠衣が乗っていた馬の手綱を引きながら、寺田屋への道を進み出した・・・・・
夕方過ぎにやっと屯所に着いた瑠衣だが、自室には行かず、そのまま山崎の部屋へと向かう。
「山崎さん」
「んぁ?
橘か??」
「えぇ…」
瑠衣は扉を開けて中に入ると、山崎は丁度薬草を煎じてたようで、独特の匂いがする。
「早かったなぁ」
「予想より上手くいきましたので、それより山崎さん薬草は?」
山崎は押入の奥から、少し大きめの綴りを一つ取り出した。
「ほぃ…
この中に全て入っとる」
座り込み、綴りを開けて中身を一つづつ確認すると…
流石、あの小難しく指定した薬草や薬が全て揃って入っている。
「確かに…
後、薬草を煎じる道具を貸して頂けますか?」
「部屋のもん好きに使ってえぇで…
ほなわいは仕事さかいに出てくるわ」
「分かりました」
渡すもんは渡したと、山崎は隠し扉から外に出て行ってしまう。
「さてと…
徹夜覚悟で頑張るかっ!!」
どっかりと腰を落ち着け、瑠衣は薬草を少しずつすり鉢にいれ煎じだした・・・・・
真夜中ー
全て煎じ終わり、中の液体を慎重に細い瓶に入れていく、残りは全て粉末状にして袋に入れた。
「はぁぁー
終わった……」
ついつい畳の上に倒れ込む…
失敗は出来ないので、慎重に慎重にやってたものだから、幾ら自分でも神経的に来るものがあったらしい。
「後片付けしないと、山崎さんに怒られそうだ…」
そう思いながらも、一日走り回った疲れの睡魔に勝てず、畳の上でウトウトと眠ってしまった。
明け方近く、それなりの収穫と共に山崎はやっと屯所に戻って来た。
土方の部屋を確認すると灯りが消えている、今日はもう寝ているのだろう。
報告は明日に回し、自室への道を辿る事に…
(そう言えば、橘は終わったんかいな??)
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