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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第29章 "策"
『キ――ンッ…ガギッ…!!』
以蔵の刀を受け止め、膠着状態になってしまう。
その時、総司と山崎が廃屋に入って来きた!!
「無事ですか!?」
総司も以蔵に向けて刀を繰り出す!
『シュンッ…』
空を斬る総司の刀…
「なっ…」
その隙を逃さずに、賺さず瑠衣が肩に一太刀を決める。
「くぅぅ…」
以蔵は跳び下がる…
本能的に危険を察知したのだろう、目の前の囲炉裏の灰をぶちまけた!!
「「「なっ…!?」」」
ただでさえ埃っぽい廃屋に、囲炉裏の灰をぶちまけられ、一気に視界が悪くなる。
その隙に外へと逃げ出す以蔵……
「ちっ…
そこっ!!」
瑠衣はたまたま持っていた苦無を、以蔵の気配がする入り口の方へ飛ばす!
『グサッ!!』
微かだが、苦無が肉に刺さる音…
だが、以蔵はお構いなしに逃走を図った………
囲炉裏の灰も大分落ち着き、やっと視界がはっきり見える頃には、以蔵は勿論逃げた後…
「血で追えへんか?」
二ヶ所の傷は必ず出血がある筈、外に出て辺りを確かめるが、血は獣道の途中で途切れていた。
「逃げられましたね」
総司は血が最後に落ちている場所で止まる、本能的に止血したのか?
「しかし、山猿みたいなやっちゃやなー」
もう一度辺りに血が落ちてないか、じっくり確認する山崎、だが痕跡は見付からない。
「山猿‥ですか…
山崎さん良い事言いますねぇー」
山猿発言にすっかり同意している総司、こういう時の反応は早い。
瑠衣は気配読みで以蔵を見付けようと思ったが、途中で止めた……
(多分…
坂本さんの所に帰ったんだろうな……)
借りは返しといた方が良い、後々の為になるから。
そう思い、総司と山崎の行動を、ただ黙って見ているだけ。
「橘さんでも追えませんか?」
総司は相変わらず感が良く、自分に取っては痛いところを突いて来てくれる…
「無理ですね、距離が離れ過ぎたんでしょう…
例え今から追っても無駄足です」
嘘じゃ無い、本当に近くには以蔵の気配は無い、意外と足も早いようだ…
これでは総司と山崎が追っても無駄になる。
「橘がそう言うんなら本当に無理そうやな」
瑠衣の言葉に山崎は捜索を諦め、木から降りて此方に来た。