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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第29章 "策"
「久々の大物やったんだけど、流石に簡単には捕まらへん…
って、わいら皆灰だらけやー!」
お互いがお互いの姿を見ると、頭から全て灰だらけの三人組になっている。
「はぁ…
一度屯所に戻らないといけませんね…
自分このまま歩くのは勘弁です………」
「私もですよ…」
「そりゃわいも同じや……」
仕方が無く、裏路地を駆使して屯所に向かう三人組…
屯所に着いた時に、土方他幹部全員から凄い目で見られたのは言う間でも無い・・・
「はぁー
酷い目に遭いました…」
夜、縁側で涼んでいる総司と瑠衣、あの後風呂問題で一騒動、原因は勿論瑠衣を如何にして入らせるか…
結局土方が風呂の前で居座り平隊士を牽制し、山崎が外から見張るという夕方の珍騒動に発展。
その間、平隊士(幹部も)全員風呂に入れなくて困ったとか………
「別に自分は後でも良かったんですよ?」
無理して一番に入る事も無い、後でこっそり風呂を使っても良いと思っていた。
「土方さんが頑として譲りませんでしたからねぇ」
夕方の騒動を思い出して、また笑い出す…
背中に般若を背負って風呂の前に居座る土方は、かなり面白かった。
「副長頑固ですから……」
風呂から上がって戸を開けると、土方が眉間に皺を寄せて座っている姿には流石に驚いた。
「クスッ…
何のかんの言っても、土方さんは心配性ですからね」
鬼の土方も身内には弱い、だが副長という立場上、極力表には出さないようにしているが…
「江戸に居た頃は、心配性も表に出てたのですけど…
今は‥自制心で抑えていますね」
局中法度で組を縛り上げ、違反者は切腹…
其処に感情は入れない鬼を演じて、組を守っている優しい鬼。
「副長が優しいのは、自分も知っていますから」
後年、近藤を失った土方は鬼と仏‥両方を司って戦陣に出たと伝わっている。
だから決して土方は鬼では無い…
多分、鬼なのは自分の方……
「はぁ…
"鬼斬りの橘"ですか……
嫌な異名を付けられたもんです…」
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