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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第29章 "策"
「そんなのがあったのですか!?」
「えぇ…
倒幕側には有名な話らしいです……
まぁ、強ち間違ってもいませんが・・・」
"鬼"でも"人"でも、その気になったら容赦なく斬る…
それが今の自分……
「私も人の事は言えませんけど…
でも心はあるでしょう?」
自分は知っている、今の瑠衣は人形では無く、優しく、温かい心の持ち主だという事を……
「心ですか…
クスッ、そうですね…」
瑠衣は穏やかに笑い、庭の桜の木を見詰める。
「・・・
昼勤か非番の日に‥計画を実行します・・・」
庭に目をやったまま、総司にそう一言漏らした。
「そうですか…
怪我だけはしないで下さいね…」
総司はそっと目を瞑る…
瑠衣がやろうとしている事を、自分は止める権利は無い…
ただ無事に戻ってきて欲しい。
もう傷付く瑠衣は見たくはない…
自分の勝手な思いだが、大切な者が傷ついて嬉しい訳が無い。
「大丈夫ですよ…
自分強いですから……」
明るく笑おうとしたが、総司の真剣な顔に笑いも引っ込んでしまう。
「本当に‥無事に…
ただそれだけです……」
「・・・・・はい…」
瑠衣も真面目な顔で総司の言葉に頷く。
あんな女忍に遅れを取る自分では無い…
殺られるのは向こう…
今回は本気全力で相手をする。
「総司、終わったら‥お願い一つだけ聞いて下さい…」
「お願いですか?」
「はい…
終わってから話ます」
「・・・
分かりました、何でも聞きますよ」
総司のその言葉に、今度こそ優しい笑顔を見せた瑠衣だった・・・・・
今日は昼勤…
夜から活動を開始する予定で、瑠衣は押入から箱を取り出した。
もう一度中身の確認中
忍装束・長めの忍刀・苦無十本・手裏剣十枚・仕込み針三本・煙玉二個・煎じた薬を水に溶かした竹筒一本意外に重装備である。
特に苦無と手裏剣は重い、素早さ重視の瑠衣には痛いが、今回は跳び道具が無いと話にならないし、忍装束で変装するので、やはり必要不可欠。
策はこうだ…
普通の忍として結界に近づき、少々触れてやる、そうすれば確認の為に、あの女忍が出て来るだろう。
ただの忍と見せ掛けて、相対している間に仕込み針を打つ………