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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第30章 "桜"

「温かい桜ですね…
この辺りの桜達の守り神なのかな?」
「そんな事も分かるのですか?」
「会話は出来ないので、微かな感覚です」
確かに一本だけ離れてそびえ立つ桜の大木、昔から沢山の桜達を見て来たのだろう。
「瑠衣は優しいですからね」
「私がですか?」
「えぇ、一見何も見てないようで…
ですが、みんなの事を見ています、うちの平隊士達の小さな変化にも直ぐ気付くでしょう?」
総司は大木に身を寄せている瑠衣を優しく自分に振り向かせ、軽く包容する。
「総司…
私は………」
「それが瑠衣でしょう?」
そう言われて、瑠衣は微かに微笑する。
「…瑠衣………」
「総司………」
桜の木の下で、口付けを交わす二人・・・・・
(全く、なんで俺が夜桜見物なんざしなきゃならねぇんだ…)
遊女数人を連れて夜桜見物に来ている土方、はっきり言って不服だが、大切な情報源に機嫌を損なわれるのも辛い。
「どないしたん土方はん」
「あっちに面白い出店が出ているんや…」
「あぁ…」
礼儀的に笑顔を作り遊女の相手をするが‥疲れる……
「お前ら出店が気になるのか??」
「めったに見れんさかい」
「そやなぁー」
遊女達の言葉に土方は一つ閃めいた。
「俺は此処で見ててやるから、好きなだけ出店を見て来るが良い、なかなか見れないんだろ?」
「ほんまに?」
「土方はん、絶対待っててや…」
「あぁ分かっているさ」
遊女達は楽しそうに出店に向かう。
「はぁ…
誤魔化すのも一苦労だぜ……」
多分遊女達は暫く帰って来ないだろう、だからと言って、捨て帰る訳にもいかない。
往来の激しい道の真ん中に何時までもいる訳にもいかず、土方は仕方がなく移動し始めた。
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