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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第30章 "桜"


長襦袢を羽織り、窓を少し開けて桜の木を見る…

始まりも桜の木なら終わりも桜の木で終わらすべきなのだろう…

屯所にある桜の木…
全ては其処から始まったのだから……

窓から出していた手に、桜の花びらが一枚落ちてくる、瑠衣はそれを暫く切なく眺める。

風が吹き、花びらはまた何処かに飛んでいってしまう。


(まるで私のよう…)


急に来て、急にに去っていく…
自分も桜の花びらも変わらない、一カ所に居れない…それが自分。


(全て幻……
鬼斬りの橘も、一番隊副隊長も総司が自分を愛してくれた事も……
記録にも一切残らない…ただの幻…桜の花びらのように消えて無くなる)


橘瑠衣自体、存在する人物では無い、ただの借りの姿…

でも…
確かに新撰組に居たし、総司を愛したのは事実…
ただ記憶が残るのは自分と当代様のみ。

もう時間が無い…
総司とこうして一緒に居られるのも、後僅かの間…
それが凄く悲しくて、切ない気持ちにさせる。


「私は…」

小さな声で桜に向かって呟く…


「お前達と…同じ…」

少しずつ散っていく桜を切なそうに見て瑠衣は、つくづく桜に縁がある‥そう思っていた。







早朝ー


総司はうっすらと目を開くが‥隣に瑠衣は居ない。


「!?」

慌てて起きて、周りを見渡すと、長襦袢一枚で窓に寄り掛かり眠っている瑠衣の姿がある。


(…どうして…)


瑠衣が何を思い、こんな所で眠ってしまったのか…
急に不安な思いに駆られる。

前に閨の中で、瑠衣は不思議な話をした事があった。


みんなが瑠衣を忘れ、誰一人覚えていない…
勿論自分さえも…あれは…ただの話では無く…もしかしたら……


(忘れませんよ…
例え何があっても…私には瑠衣しか居ないのですから)


窓に寄り掛かっている瑠衣を、そっと横抱きにして布団に寝かせてやる。

その表情は切なそうに睫毛が震えて、今にも泣きそうにも見えてしまう。


(まるで初めの頃を思い出しますね…)


切ない顔で、寝ている自分に唇を重ねていた、あの頃の瑠衣…
今の表情も同じに見えるのは気のせいか?


(また……
辛い事を一人で抱え込むのですか?
私には何も出来ないと…)


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