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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第30章 "桜"
総司はそっと瑠衣の頬に触れて見る、夜風に当たってたせいか、少し冷たくなってしまっていて…
総司も切なそうな瞳で瑠衣を見詰めた。
初めて女性に恋をした…
本気で欲しいと思った…
嫉妬や欲望という事を初めて知った…
全て瑠衣が居なければ無かった事…
相変わらず人斬りと呼ばれ、周りから恐れられ、本心を隠し、組と近藤さんの為に鬼となって働く…
多分ずっとその繰り返しだっただろう。
瑠衣が知らず知らずの内に、自分の心を開いてくれた。
そう、自分でも気付かない内に…
一緒の部屋で生活しているうちに、本心を隠す事も忘れて瑠衣と接していた。
自分も瑠衣に興味があり、色々と構ったっけ…
何時の間にか、隊長と副隊長という立場でお互いを信頼し、二人で夜中ずっと走り回った…
その頃には本心を隠すなんて言葉は、綺麗さっぱり消えていた。
あの頃の瑠衣は多分困惑していたと思う、理性と感情の狭間でどうして良いのか分からす、自分を手本に感情というものを考えていようだ。
その後瑠衣に一から教える事になったが、それで良かったと思う。
感情が無い訳では無く、忘れていただけなのだから、だから思い出せれば良い…そう思った。
何時の間にか感情豊かに動き回る瑠衣を見て、良かったと思った…
自分は間違って無いと………
そんな瑠衣が、また切ない表情をしている。
絶対に何かある…
総司は本能的にそう感じてしまう。
それは多分良い事では無い。
「・・・瑠衣・・・」
たまらず眠っている瑠衣を抱き締める…
離したくない…
誰にも渡したくない…
一人にしないで欲しい…
瑠衣が居なければ、自分はまた人斬りに戻ってしまうかも知れない。
そんな思いを胸に瑠衣を抱き締めた。
「う…ん……」
瑠衣の目が、ゆっくりと開く…
窓辺に居た筈が、何時の間にか総司に抱き締められているらしい。
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