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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第31章 "壊"
朝ー
総司と瑠衣は土方に呼び出されていた。
「お前ら大阪出張だ」
総司は話を聞いている。
瑠衣は歴史として知っている。
二人共沈黙して、ただ土方を見ているだけ。
「お前ら、もう少し反応は無いのかよ…」
そう言いながら、山崎が集めた資料を二人に差し出す。
其処には、亡き芹沢が起こした数々の金策の悪行が綴られている。
「此奴を表に出す訳ではいかねぇ、大阪奉行所与力山内を亡き者にしろ…良いな」
「「分かりました」」
「時は一刻を争う、直ぐ出発してくれ」
黙って頷いて、土方の部屋を出る総司と瑠衣に…
「こういう時のあの二人は、鬼より怖いってか…」
土方も溜め息を吐く鬼振りである・・・
自室に戻り支度をする二人、大阪までなら川路が一番早い、それにそんなに必要な物も無い。
「行きますよ先生」
「えぇ…」
二人は簡単に荷物を纏め、大阪に向けて屯所を出た。
大阪までの船に揺られ、順調に下って行く…
瑠衣は船先辺りから、ずっと景色を眺めている。
(初めて京から出るな…)
景色が少しずつ変化をするのを、ただ黙って眺めるだけなのだが。
こういう、のんびりした船は初めてで、瑠衣の興味を誘う。
(自分の時代なら、あっという間だから)
京ー大阪間なら一時間弱?
そんな程度で着いてしまうので、こんな景色云々の世界じゃ無い。
大体、自分が人間が使う乗り物で、移動する事すらあり得ないのだ。
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