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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第7章 "刀"
土方も自室に戻り、隊服を脱ぎ捨てどっかり腰を落ち着けて煙管を吹かし始める、現代で言う喫煙愛好家だ。
「・・・山崎…」
小声でそう一言漏らすと、天井裏から忍が一人降りて来た。
忍装束の為顔は見えないが、細身で一般的な背丈な男である。
「どないしましたか副長?」
「山崎、橘を調べてくれねぇか??」
山崎と呼ばれた忍はおやっと首を傾げ土方を見る。
山崎丞、新撰組随一の忍の腕を持った監察方であり土方の裏の相棒でもある。
「何ぞ問題でもありまったか?」
「いや"完璧過ぎるんだよ、逆に胡散臭せぇ」
「"完璧"過ぎるでっか…
分かりました、一通り調べてみますわ」
そう良い残し山崎は軽々と天井裏に飛び姿を消した。
「何か出たら当たりモンだがな…」
土方は文机に向かい、溜まりに溜まってている仕事を再開した。
あれから直ぐに総司と瑠衣も自室に戻って来ていた。
「橘さん」
急に瑠衣を呼ぶ総司。
「はい?
何でしょうか?」
怪訝な顔で総司に答える。
「橘さんの刀、見せて頂いて構いませんか?」
深夜に戻る事を知っている瑠衣達は先に布団を引いている…
その枕の向こうに瑠衣の刀が置いてあった。
「???
別に構いませんが・・・・・」
徐に刀の前まで行き、総司は瑠衣の刀を持ち上げようとする、しかし重たくて持ち上がらない。
「?????」
普通刀が持ち上がらない程重い訳が無い、不思議に思いもう一度持ち上げようとするがやはり上がらない。
「…!!
あぁ…すみません!!」
振り向いて事に気づいた瑠衣が、自分の刀を握っている総司の手に己が手を重ねた……
"ドキンッ…"
不思議と総司の胸が大きく高鳴る…
「???????」
(な…何ですか!?今のは…!?!?)
有り得ない胸の高鳴りに不思議な感覚を覚える…
瑠衣の女子みたいな細く柔らかく暖かい手がゆっくりと離される。
「沖田先生、もう一度刀を持ち上げて下さい」
「・・・・・・・・」
「沖田先生??」
もう一度総司の名を呼ぶと総司はハッと我に帰り、瑠衣の刀を持ち上げようとする。
『フワッ・・・・』
先程上がらない程重かったのが、今度は羽が生えたかのような軽さで刀は簡単に持ち上がった。
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