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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第31章 "壊"
次々団子は皿から消えていく…
(よく入るなぁ-)
半ば呆れて総司の食べっぷりを見ている瑠衣、自分には間違っても、総司の真似は出来そうに無い・・・・・
「自分は一本で十分です、後は先生がどうぞお食べ下さい」
お茶だけを飲んで根を上げる。
「そうですか?
では遠慮なく…」
次々と減っていく団子に、多少の胸焼けを覚えながら、瑠衣はお茶を飲んで知らんふりを決め込む。
兎に角、大阪に居る間は上司と部下の立場を崩す気は無い、いや‥此からは極力そうしたい…でないと自分の決意が鈍りそうだから。
外からは、夏に近付いた生ぬるい風が部屋の中に入って来る、もう少しで本格的な夏が来る。
部屋から出られず、とりとめやる事もなし…
夜までの時間が長く感じる。
今日ばかりは、総司と二人きりが辛い。
「…早く終わらせて京に帰りたいですね」
「そうですね、流石にこの状態は辛いですからね」
団子を頬張りながら総司は相打ちを打つ。
この緊張感で夜まで保つだろうか?
瑠衣の頭に不安が過ぎる。
あえて総司を突き放しているのは自分…
これ以上巻き込みたくない、それが理由・・・
普通の人間である総司に、あの上級や結界は無理…悲しいが現実。
この大阪出張が良い機会になるかも知れない…
そう思って、黙って引き受けた。
「先生お茶を頂いてまいります」
瑠衣は二人分の湯のみを持ち、部屋を出て行く。
「・・・・・・・・」
大阪に来てから、瑠衣の態度がおかしいのは分かっている…。
場所柄上下関係は崩せないが、それにしても淡々とし過ぎてるのでは無いか??
瑠衣に何時もの余裕が一切感じられない…
山内一人殺るだけで、此処まで緊張する瑠衣では無い。
(では何故??)
何となく自分を避けている‥そんな感じが見受けられる。
何かあるのだろうか??
総司の中の漠然とした不安の中、刻は着々と進んでいく。
お茶を貰い戻って来た瑠衣は、その後一言も話さずに刻を待っているだけ。
大刀を持ち壁に寄り掛かり、窓の外を眺める姿は本当に浪人そのもので、全く隙が無い。
総司も掛ける言葉も無いまま、目を瞑り静かに刻を待っている…。
夜ー
「行きますよ橘さん」
「・・・はい」
網笠を被り吉田屋を出る二人、目的の場所は検討が付いている、先回りし気を伺う。