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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第31章 "壊"
久しぶりに形代を使い、二人が寝てるように見せ掛ける。
「寒いですから、一枚羽織った方がいいですよ…って持って来てませんか………」
「一応暑いですからね」
「まぁ‥何とかします…
絶対に手を離さないで下さい、良いですね」
瑠衣は総司の手をしっかり握る、総司もその手を握り返す。
「幾ら何でも距離が長過ぎますので、何回かに分けて転移します、気を付けて下さい、では行きます…!!」
瑠衣がそう言った瞬間に、二人は部屋から消えた。
時空と時空を繋ぎ合わせ転移する…
何回かに分けてと言ったが、何処に出てとは言って無い。
初めての転移体験に、総司はただ驚くばかり…
一瞬で森の中だったり、空の上だったり、見た事も無い景色が次々と目に入る。
五回目の転移で、何処かの山の上に出た。
「ふぅ…
着きましたよ」
辺りは真っ暗で何も見えない、ただ異常に寒いのは分かる。
「すみません寒いですよね…」
瑠衣はそっと総司の首に触れる…
と、その瞬間寒さが消えて無くなった。
「???」
「クスッ…
分かりませんよね、自分の気を少し分けたんですよ、此でも朱雀様ですよ…
火や熱を操るのは得意です」
「あぁ‥なる程……」
分かるような、分からないような…
総司の理解の範疇を、遥かに超えている。
「流石に暗いですね…」
瑠衣は手の平から、無造作に炎を出し…
それを歩きながら、何個も岩の上に置いて行く。
最後に社の周りに、篝火を焚いて…
やっと周りが見えるようになり、辺りを見渡すと……
其処は断崖絶壁に近い場所で、草一つ生えていない。
そして社が一つ……
「凄い場所ですね…
下から見るのとは大違いです」
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