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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第31章 "壊"


「そうですね…
霊峰ですから‥此処は神聖な地なんですよ」

「霊峰……」

「えぇ…
この国を守っているとも言われています、それだけ自然の力の強い場所なんです」

瑠衣は岩に腰掛けて、楽しそうに話す。


「瑠衣は来た事があるのですか??」

総司も瑠衣の隣の岩に腰掛ける。


「自分の時代でしたら何度か…
一応儀式もありますし」

「本当に瑠衣は何でも出来ますねぇー」

「クスッ…
朱雀様ですから」

「…そうでした……」

こんな、たわいのない会話につい笑ってしまう。


「そう言えば、前に渡した根付けした飾り持っていますか?」

「えっ?
あぁ‥はいありますよ」

総司は帯から根付けを外す、何時も必ず持ち歩いている。


「借りても良いですか?」

「勿論です」

元々瑠衣の物だ。

瑠衣は根付けを受け取ると、社に向かって歩き、社の中央の祭壇に根付けを置く。


「さて…
後は朝を待つだけです、驚きますよ絶対」

もう一度岩に腰掛ける。


「御来光って…
雨とか降ったらどうするのですか?」

「うーん…
余りその心配は無いと思いますが…
なにせ此処は雲の上ですし」

「・・・雲の上ー!?」

「はい、富士の山頂の方が雲より高いんですよ…
まぁ、絶対雨が降らないとは言いませんが、今の天気ならば大丈夫だと思います」

御来光でないと意味が無い…
その為に富士に来たのだから。


「…朝まで長いですね……」

「総司…
霊峰で変な行為は駄目ですよ、逸れこそ罰が当たります」

総司の行動を先読みしての、瑠衣の釘刺し。

「……
一緒に座るのも駄目ですかぁ?」

「はぁ‥それくらいならば…」

総司はにっこり笑い、瑠衣と同じ岩に座った。

日の出まで、後一刻ちょっと…


瑠衣は膝を抱え手の上に顎を乗せて、太陽が出る方向をずっと眺めている。


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